国際協同組合年を前に、協同組合の役割を問う
2025年が国際協同組合年に指定される中、東京都新宿区において、パルシステム連合会が主催した学習会が開催されました。10月9日、社会学者の近本聡子氏を招き、「日本の協同組合と生活の状況・課題」と題した講演が行われ、温かい雰囲気の中で94名の参加者が集いました。この学習会では、協同組合が持つ様々な役割について深く考える機会が提供されました。
「包摂」をキーワードに取り組む
近本氏は、協同組合の起源や国際的な活動の歴史、また日本の協同組合が直面している多くの課題について詳しく説明しました。彼女は元愛知学泉大学の教授として、協同組合がどのように社会を支えているかを努めて再考しました。「協同組合はビジネスツールである」と彼女が述べたように、協同組合は経済的、社会的発展のための重要な手段であると考えられています。
昨今、世界中で発生している紛争や格差、気候変動といった問題に影響を受け、多くの人々が経済的な困難に直面しています。こうした状況から、協同組合がどのように「包摂」を実現できるかが問われています。近本氏は「困っている人、排除される人が増えています。協同組合を利用して、彼らを経済活動に取り込むことで、社会全体の発展を促進できる」と述べました。
日本の協同組合の多様な姿
日本における協同組合は、農協や生協など異なる法律に基づいて運営されており、その結果、各種の課題が存在します。近本氏は、生協がどのように成長を続けてきたかを振り返りつつも、同時に「経済的な理由で利用をあきらめる人や、事業継続を断念する人がいることが現実」と指摘しました。これは、協同組合の活動が必ずしもすべての人々に平等に利益をもたらしているわけではないことを示しています。
縮小社会における女性の活躍
学習会では、参加者の多くが女性であり、その役割や社会的なつながりについても議論されました。近本氏は、「地域活動から女性が撤退する傾向があり、どの生協でもこの問題が大きな課題となっています」と述べ、女性が抱える社会的な制約に触れました。彼女は、生協自体が女性が活躍する姿を具体的に提示する役割を果たしていないのではないかと問いかけ、「家族に還元されるような社会的なつながりが必需である」と強調しました。
多様性を受け入れる未来
これから迎える少子化という課題を通じて、日本社会はさらなる縮小が予想されています。その中で、さまざまな人々が互いの個性を尊重し合いながら共存できる社会を目指すことが重要です。近本氏は、地域の生協による共同購入や新たなグループ購入の仕組みが多様性を受け入れる助けになると期待を寄せています。
最後に近本氏は、「多様性を包摂することで生まれる文化の変容に、日本社会が耐えられるか」が今後の課題であるとし、参加者に対し「知ること、認めること」を忘れないよう呼びかけました。「これまでの活動に誇りを持ちながら、さらに『どうすべきか』を問いかけてください」と力強い言葉を投げかけました。
未来を見据える協同組合の力
パルシステムグループは、協同組合の持つ力を活かし、より良い社会の実現に向けて引き続き努力を重ねていくとしています。多様性に富んだ社会を築くためのその活動に、今後も注目が集まることでしょう。