体力要素と労働生産性を結ぶ共同研究
東海大学スポーツ医科学研究所と株式会社ウェル・アイは、体力と労働生産性の相関を探る共同研究をスタートしました。この研究は、「プレゼンティーズム」と呼ばれる、出勤しているものの仕事のパフォーマンスが低下している状態への理解を深めることを目指しています。
プレゼンティーズムとは
近年、企業における生産性向上が求められる中で、健康経営の取り組みが重要視されています。プレゼンティーズムは、多くの人が抱える健康課題の影響で、通常以上のパフォーマンスを発揮できない状況です。この状態は、単なる欠勤よりも企業における生産性低下の大きな要因となることが多いとされています。特に、プレゼンティーズムによる損失は健康関連コストの60%以上を占めるとも言われており、企業はその対策に悩んでいます。
研究者たちは、これまで主に生活習慣(運動、睡眠、食事)とプレゼンティーズムの関係を検証してきましたが、体力の要素に焦点を当てた研究は限られていました。そこで、本研究では下肢筋力や敏捷性などを客観的な指標として使用し、それらが業務パフォーマンスとどのように関連しているかを検証していきます。
研究の概要
この研究では、企業の健康測定会に参加する労働者に対して、以下の項目を測定します。
1. 下肢筋力(立ち上がりテスト)
2. 敏捷性(座位ステッピングテスト)
3. 歩行能力(2ステップテスト)
4. バランス能力(閉眼片足立ち)
5. 柔軟性(長座体前屈)
これらの測定データをもとに、体力とプレゼンティーズムの関連性を統計的に分析し、関係構造の視覚化を目指します。また、各体力測定項目の結果を比較して、単なる運動習慣の有無ではわからない「体力の本質」がプレゼンティーズムに与える影響を検討します。
研究の意義
この研究のユニークな点は、生活習慣だけでなく、体力という客観的な指標に着目しているところです。体力がプレゼンティーズムにどのように影響するかが明らかになれば、今後の対策においてどの体力要素を重点的に向上させるべきか、具体的な示唆を得ることが可能になります。
初期分析の結果
初期の探索的分析から、下肢筋力や敏捷性がプレゼンティーズムと有意な関連があることが示唆されています。これらの体力要素を向上させることが、労働生産性の維持・向上に寄与する可能性があるとのことです。これは、運動の有無といった行動指標だけでなく、体力そのものが経済的な成功と関連することを示しています。
今後の研究展開
本研究のさらなる展開として、サンプル数を増やした詳細な分析や、縦断的な研究、運動介入による因果関係の検証などが計画されています。これによって、体力の向上が労働生産性に与える影響をより深く理解し、プレゼンティーズム対策の手法を高度化していく考えです。
ウェル・アイのプログラム
ウェル・アイでは、研究の結果を基に企業向けに体力づくり支援プログラムを提供していく予定です。具体例としては、体力×労働生産性の可視化プログラムや、体力向上を目的とした実践型プログラムなどがあります。
まとめ
この共同研究は、企業の健康経営に新たな視点を提供し、体力と労働生産性の関連を明らかにする重要なステップです。今後の研究展開によって、企業が直面するプレゼンティーズムという課題に、より適切な対策が講じられることが期待されます。