鈴木牧之の波瀾万丈な生涯を描いた新作小説
直木賞作家、木内昇氏が手がけた新刊『雪夢往来』が2023年12月16日に新潮社より発売される。この作品は、江戸時代の出版界に翻弄された越後の商人、鈴木牧之の波瀾万丈な人生を描いている。特に、彼の名著『北越雪譜』がどのように生まれたのか、その知られざる背景に光を当てた作品となっている。
江戸文壇の影響と鈴木牧之
越後の鈴木牧之は、塩沢の商人として地元の風俗をまとめた「雪話」に注目が集まり、次第に出版の道を歩むことになる。しかし、彼の道のりは平坦ではなかった。出版を手がける版元からの金銭要求、仲介者の相次ぐ死去、そして滝沢馬琴に原稿を奪われるという悲劇に見舞われる。
こうした困難な状況の中で、彼は決して諦めることなく挑戦を続けた。40年の歳月が経つ中で、如実に描かれた江戸の出版界の動きや、登場する著名な戯作者たちとの関わりがこの物語の見どころの一つだ。
鈴木牧之が貢献した文化
『北越雪譜』は、京伝の目に留まり、まさにその瞬間からその運命は大きく変わる。その初稿が世に出てから、ようやく40年を経て、山東京山の手によって刊行されることとなり、一躍ベストセラーとなった。今日でも、岩波文庫などを通じて多くの読者に愛され続けている。
異なる視点から描かれる物語
本作『雪夢往来』は、江戸時代の戯作者たち、特に山東京伝や滝沢馬琴、さらには山東京山の存在に焦点を当てながら、鈴木牧之の物語を4つの視点から描写する構成になっている。彼らの創作にかける情熱と切磋琢磨の様子が、作品の中で生き生きとした形で表現されている。読者はその中で、彼らが抱える葛藤や夢、そして文化の創造に関する深い考察を得ることができるだろう。
現代との関連性
面白いことに、舞台は2025年の大河ドラマ「べらぼう」の主人公、蔦屋重三郎が死去した直後で、現代の出版プロセスが整いつつある時代に設定されている。こうした設定は、江戸と越後が当時どのように隔たっていたか、またそれが文化的にどのように影響していたかを明らかにし、読者に深い理解を促す。作品全体を通じて展開される価値観や思想の交錯は、今日にもつながる普遍的なテーマを抱えている。
このように、鈴木牧之の生涯に影響を与えた多くの要素が、対話と共存の中で描かれており、読者はまるで歴史の中に引き込まれるような感覚を味わえるだろう。知識と教養を深められる一作が誕生した。ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。
著者情報
木内昇(きうち・のぼり)は1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年に小説家としてデビューを果たし、多数の文学賞を受賞してきた著名な作家である。それぞれの作品は、細やかな描写と感情に訴える力を持ち、読者を魅了し続けている。
書籍情報
- - タイトル: 雪夢往来
- - 著者名: 木内昇
- - 発売日: 2023年12月16日
- - 定価: 2,200円
- - ISBN: 978-4-10-350957-8
- - URL: 新潮社公式サイト