千葉大学大学院理学研究院の坂根郁夫特任教授らの研究チームは、ミリスチン酸が食後の血糖値に与える影響を解明するための臨床試験を実施しました。ミリスチン酸は飽和脂肪酸の一種で、従来まで悪玉とされていましたが、今回の研究で少量の摂取が食後血糖値を有意に抑制することが明らかになりました。この研究の結果は、将来の2型糖尿病予防に寄与する可能性があります。
研究の背景
世界中での2型糖尿病患者は約6億人に達し、その予備軍も同数以上存在します。食後の血糖値の急上昇は、さまざまな病気や疾患の原因となりますが、それを抑制する食品の開発は進んでいませんでした。千葉大学の過去の研究では、ミリスチン酸がマウスモデルにおいて高血糖を改善することがわかっていましたが、人間での影響は不明でした。
研究の成果
本研究は、100名の健康な被験者を対象に、ミリスチン酸を異なる用量で投与しました。結果として、中用量(970mg/日)を摂取したグループはプラセボ群に比べ、血糖値の上昇が約20%抑制されました。さらに、高用量群でも類似した結果が得られましたが、低用量群では同様の効果は見られませんでした。
今後の展望
ミリスチン酸は、牛乳やココナッツ油に自然に含まれているため、非常に安全な化合物です。しかし、日常的な食事からは十分に摂取できない可能性があるため、何らかの形での積極的な摂取が重要です。今後の研究では、ミリスチン酸の具体的な効果メカニズムを解明し、健康維持への寄与を科学的に裏付ける予定です。
研究プロジェクトについて
この研究は、JST研究成果最適展開支援プログラムA-STEPの支援を受けて実施されました。
用語解説
- - ミリスチン酸 : 牛乳やココナッツ油に多く含まれる炭素数14の飽和脂肪酸。
- - 糖化 : 体内の余分な糖とタンパク質や脂質が結びつく現象。
- - 経口ブドウ糖負荷試験 : 糖尿病診断に使用される血糖値測定法。