フェンディとナタリー・ミラーが織りなす新しい挑戦
イタリアのラグジュアリーブランド、フェンディが新たなプロジェクトを発表しました。それは、オーストラリアの著名なテキスタイルアーティスト、ナタリー・ミラーとのコラボレーションによる「ハンド・イン・ハンド」です。このプロジェクトは、彼女のスタジオがあるサザンハイランズで行われ、オーストラリアメリノウールを使用した手染めの美しいタペストリーを制作します。ミラーのスタジオは自然に囲まれた場所にあり、そこでのアートがオーストラリアの風景や音からインスピレーションを受けていることは、彼女の作品にも反映されています。
「ハンド・イン・ハンド」は、1997年にシルヴィア・フェンディによりデザインされた人気の「バゲット」というバッグをベースに、地域の職人たちと協力しながらアートを創作するプロジェクトです。2020年にイタリアで始まり、アメリカ、日本、中国、マダガスカル、スコットランドなどへも広がったこのプロジェクトは、アートや工芸の持つ力を再認識させるものとなっています。プロジェクト名の「ハンド・イン・ハンド」は、それぞれの地域での職人たちとフェンディの職人との共同作業を強調しています。
ナタリー・ミラーは、オーストラリアにおける優れた手工芸の技術を体現するアーティストです。彼女は、オーストラリア最古のデザイン機関「スタートギャラリー&スタジオ」でタペストリーの技術を学び、過去100年以上にわたる伝統に根ざした方法で作品を制作しています。また、彼女は手染めのプロセスにも特にこだわりを持っており、地元の植物や樹皮を用いてウールを染め上げています。この過程で生まれる色合いは、サザンハイランズの美しい景色や自然からインスパイアを受けたものです。
ミラーの「バゲット」の再解釈は、タスマニア産のメリノウールを用いたもので、サザンハイランズの豊かな自然を称えるデザインです。この地域に位置するナンドル・ウーレン・ミルでは、古い技術を使って現代的な糸を生産しており、フェンディの新しいプロジェクトに大きく寄与しています。
デザインのアプローチは、これまでのミラーの作品とは一線を画しており、穏やかでニュートラルな色合いが強調されています。田園風景を反映したカラーパレットは、特に夕陽に染まる金色の景色を思わせるものです。ウールは数日かけて乾燥させ、手技で美しく巻き取られ、その後、伝統的な技法を駆使した織機で仕上げられます。
このプロジェクトでは、バッグのデザインにもミラーの技法が反映されています。ボディとショルダーストラップは、手工芸に根ざしたものとして仕立てられ、内側のライニングには「FF」ロゴが施され、レザー製のハンドルとポケットには優雅なベージュが使用されています。一方で、シルバーパラジウムのアクセントが現代的な印象を与えています。
「ハンド・イン・ハンド」の新しい「バゲット」は、サザンハイランズのすばらしい景観と文化を称えつつ、フェンディのスピリッツを際立たせるものとなるでしょう。このプロジェクトを通じて、フィルムトン、イタリアとオーストラリアの職人たちの技術と情熱に新たな命が吹き込まれています。
ナタリー・ミラーって誰?
ナタリー・ミラーは、オーストラリア・サザンハイランズを拠点に活動する世界的に名を馳せるテキスタイルアーティストです。彼女の作品は主に、手染めのウールを用いた壮大なタペストリーに代表されます。ミラーのアートは、彼女自身の家族に根ざした手工芸の伝統を活かし、オーストラリアの豊かな自然と文化に深い愛情を持って制作されています。彼女のスタジオもまた、その美しい環境が創作の源となっているのです。
ミラーは自身の知識を積極的に共有することにも価値を置いており、クリエイティブなリトリートに参加者を受け入れています。そこで、彼女は新たなクリエイティビティを引き出すための指導を行い、多くの人々に工芸やデザインの楽しさを伝えています。彼女にとっての喜びは、ものづくりとその過程を他者と分かち合うことなのです。