アセットマネジメントの新時代到来
株式会社DiOは、文化財保全に特化したクラウドサービス『一元帳』の提供を開始しました。この新しいSaaS商品は、中小企業や小規模施設が直面している老朽化や運用の非効率、人材不足といった問題を解決することを目指しています。
『一元帳』は、企業や自治体が所有する施設や資産に関する情報を集約し、DiOが独自に開発した「AVS1866」と呼ばれる健全度解析技術を用いて、設備の劣化やリスクを視覚的に表示します。小規模な組織でも導入しやすい価格設定と設計を実現しており、これまでデジタルトランスフォーメーション(DX)への一歩を踏み出せなかった中小企業にとって、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
DiOの理念とは?
DiOは、「未来へ保存すべき文化財が人手不足や老朽化によって消え去る現実」に直面してきました。文化財は専門知識のある人材が不足しており、図面が残っていない場合も多く、劣化が進んでもその状況に気づかれることがありません。災害後に文化財を復旧しようとしても、元の状態に関するデータが存在しないという現実もあります。
この情報の欠落を解消するため、DiOは3Dレーザースキャンによる点群データ取得と、差分解析技術を導入しました。事前に取得したデータをもとに、劣化や損傷を検知する能力が向上しています。特に図面が存在しない文化財に対しては、スキャンデータをもとに新たな図面を起こすリバースエンジニアリング技術も適用されています。
技術の適用先は文化財のみならず
これらの技術は、文化財保全に留まらず、工場やプラントの老朽化した設備にも応用できることが判明しました。工場ではしばしば長い間使用されている設備の図面が失われ、補修計画が難航します。
DiOは、文化財保全のアプローチを基に、設備をスキャンして図面化し、適切な補修を計画する流れを整備しました。その上で、産学連携により、設備の劣化を定量化する数理モデル『AVS1866』を開発しました。これにより、従来の壊れた後に修理する“事後対応型”から、壊れる前に気づく“予防保全型”へと転換を図りました。
高額な3D技術の壁
ただし、文化財も工場も、最も苦しんでいるのは大企業ではなく、中小企業や予算が限られた小規模組織です。3Dスキャン技術は依然として高コストで、専門的な解析には多くの時間と資金が必要です。
そのため、DXの重要性を理解していても、限られた予算では新しい技術を導入することが難しいという現実があります。DiOはこの矛盾を解消するために、3D技術を入口にしない新たなサービス開発に着手しました。
『一元帳』が目指すもの
『一元帳』は、あらゆる設備情報を集約し、一元管理することで中小企業の負担を軽減します。このサービスには以下の特徴があります:
- - 保全活動や修繕履歴、業者、部品、担当者情報などを一元化
- - 独自技術『AVS1866』による設備の健全度解析
- - 属人化を排除し、ワークフローの標準化
- - 中小企業でも導入可能な価格設定
- - 法定点検項目の履歴を蓄積し、都道府県対応データサポート
これにより、デジタルトランスフォーメーションを始めるための力すらなかった現場でも、今日から踏み出すことができるようになります。
AI時代に向けた拡張
DiOは、AIによって3Dモデル制作のコストが下がる未来を見据えています。この先、『一元帳』の情報を活用し、3Dデータと連動させたデジタルツイン・ビューアを開発中です。これにより、文化財や工場、商業施設といった様々な情報に瞬時にアクセス可能な世界を創造します。
最初の展開地域
DiOは『一元帳』をまず工場・プラント、そしてビル管理会社に導入します。その後、限られた予算でアナログデータを管理する学校法人や公共機関、最終的には文化財の保護へと技術を還流していく計画です。
この『一元帳』は、DiOの創業以来の開発と経験から生まれた集大成なのです。
会社情報
株式会社DiOは、京都府京都市上京区に本社を置き、アセットマネジメントDXやクラウドサービス開発、文化財3D解析事業などを展開しています。2017年に設立され、代表取締役の一筆芳巳が率いる企業です。今後、様々な分野でのさらなる展開が期待されます。