日本とウズベキスタン、未来を拓く1万人プロジェクト始動
日本国内で喫緊の課題となっている少子高齢化に伴う人材不足に対し、新たな解決策が提示されました。2025年5月29日、一般財団法人日中亜細亜教育医療文化交流機構(以下:JCAEMCE、東京都港区、鳩山友紀夫最高顧問)は、ウズベキスタン共和国内閣附属移民庁(ウズベキスタン・タシケント、ムサエフ・ベクゾド長官)との間で、「ウズベキスタンからの特定技能人材1万人受け入れプロジェクト」に関する歴史的な覚書(MOU)を締結しました。この調印式は、日本記者クラブ(日本プレスセンタービル)のAホールで開催され、両国の関係者が一堂に会し、中央アジアと日本の未来を繋ぐ新たな一歩として注目を集めました。
深刻な人材不足への挑戦:特定技能制度の活用
日本は現在、建設、介護、農業など、多くの重要産業で労働力不足に直面しています。この課題に対処するため、政府は「特定技能」制度を導入し、即戦力となる外国人材の積極的な受け入れを進めています。古くはシルクロード時代から交流を深めてきた日本とウズベキスタンは、現在も中央アジア随一の親日国として、強固な友好関係を築いています。今回のプロジェクトは、このような歴史的友好関係を基盤とし、日本の様々な業界へ優秀なウズベキスタン人若者を受け入れることで、国内産業の持続的な成長を推進するとともに、ウズベキスタンの若者たちには新たな活躍の機会と成長の道筋を提供することを目指しています。
JCAEMCEの鳩山友紀夫最高顧問は、「このプロジェクトが、両国の発展に寄与するだけでなく、国際社会における平和と繁栄にも貢献することを確信しています」と挨拶しました。一方、ウズベキスタン移民庁のムサエフ・ベクゾド長官は、「ウズベキスタンは豊富な労働力を有しており、特に若年層の人口増加が顕著です。これまでロシアや欧州諸国への人材送り出しが中心でしたが、深い親しみを抱く日本へも、今後より多くの優秀な人材を送り出したいと強く願っています」と述べ、日本への期待感を表明しました。
包括的な一貫支援体制で雇用定着を促進
本プロジェクトは、JCAEMCEとウズベキスタンの現地パートナーであるUniCapホールディング社との共同体制で運営されます。両社はこれまで培ってきた日本語教育と人材マッチングの専門知識を融合させ、ウズベキスタン現地における教育提供から、日本国内企業とのマッチング、さらには来日後の登録支援業務や雇用定着支援まで、包括的かつきめ細やかなワンストップサポート体制を構築しています。
特に注目されるのは、日本語教育コース「Yapon Mahorat Nuri」です。現在、タシケント、サマルカンド、ナマンガンの3都市に教育拠点を設置し、日本語の基礎から特定技能試験対策、さらには就職面接対策まで、現地で完結する学習環境が整備されています。カリキュラムは、日本語の「読む・書く・聞く・話す」の4技能をCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)基準に基づき体系化しており、日本での就職後も「使える」日本語を通じて、長期的な雇用定着を図ることを目指しています。
さらに、プロジェクトに参加する人材と日本国内の求人企業を直接結びつける独自のマッチングプラットフォーム「WiseBridge」も開発されました。このプラットフォームは、求人内容、勤務地、希望職種などの条件に応じて検索・応募できる機能に加え、オンライン面接ツールも搭載されており、候補者が母国にいながら円滑な採用活動を行えるよう支援します。WiseBridgeは本年6月中のリリースが予定されており、日本の企業とウズベキスタンからの優秀な人材との出会いを加速させることでしょう。
各分野からの期待:産業活性化と温かいケアの実現
調印式では、各分野の専門家からも本プロジェクトへの期待が表明されました。JCAEMCEの前田武志常任顧問(元国土交通省大臣)は、「今回のプロジェクトが、建設業界における深刻な人材不足の解消に貢献するとともに、将来的には介護や農業をはじめとする他の業界にも波及し、日本全体の産業構造の持続可能性を高める一助となることを大いに期待しています。国境を越えた人材交流が、現場に新たな活力と発展の可能性をもたらすことを願っております」と語り、プロジェクトが広範な影響をもたらすことに言及しました。
また、特定医療法人研精会の芹澤貴子執行役員は、介護現場の現状に触れ、「介護現場では、深刻な人手不足が続いており、日々のサービス提供に支障をきたすケースも少なくありません。今回のプロジェクトを通じて、意欲あるウズベキスタン人材が日本で活躍し、現場に新たな風を吹き込んでくれることを大いに期待しています。文化や言語の違いを超えた温かなケアの実現に向け、私たち受け入れ側も環境整備に努めてまいります」と述べ、介護分野における外国人材の重要性と受け入れ側の覚悟を示しました。
プロジェクトを牽引する両機関
一般財団法人日中亜細亜教育医療文化交流機構(JCAEMCE)は、2012年の設立以来、アジア6カ国において、日本語教育、大学進学支援、人材育成プロジェクトを展開してきました。留学支援や資格試験の実施、現地教育機関の設立などを通じて、アジアと日本を結ぶ人材・教育の架け橋として機能しています。
ウズベキスタン共和国内閣附属移民庁は、国外での労働力派遣政策を担当する政府機関であり、日本をはじめとした諸外国との人材交流・協力を推進しています。特に日本の特定技能制度に関しては、政府として最も積極的に関わる機関の一つであり、制度設計・実務対応ともに国際的な注目を集めています。
この「特定技能人材1万人受け入れプロジェクト」は、日本国内の人材不足という喫緊の課題に対し、ウズベキスタンとの強固な信頼関係と具体的な支援体制を基盤として、新たな解決策を提示するものです。この取り組みが、両国の経済発展と文化交流を一層深化させ、未来志向の国際協力モデルを築くことを期待されています。