微生物とPHB分解
2025-01-28 14:05:27

沿岸の微生物多様性が生分解性プラスチック開発を加速する

近年、プラスチック製品による海洋汚染が深刻化する中、生分解性プラスチックの重要性が高まっています。特に、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)は、自然界での分解が期待できる生分解性プラスチックの一種として注目されています。このPHBの生分解を促進する要因として、沿岸域の微生物叢の多様性が果たす役割が新たに明らかになりました。国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究グループは、沿岸域から採取した海水中に存在する微生物の多様性がPHBの生分解を促進することを示す研究成果を発表しました。

研究は、日本沿岸の15地点から海水を採取し、海水中に生息する微生物の種類やその分解機能を解析する形で実施されました。PHBの分解に関連する新たな微生物や酵素が数多く発見され、分解過程が進む中で関与する微生物の種類が変化することも確認しました。この結果、微生物の多様性がPHBの分解において非常に重要であることが示されました。

通常、生分解性プラスチックの評価試験、特にBOD試験には長期間を要します。海水中の微生物の量が土壌などの環境に比べて少ないため、評価にかかる期間は1~2年が標準となっています。しかし、今回の研究により、海水中に存在する多様な微生物群を活用することで、性能評価の期間短縮が可能となることが示唆されました。

具体的には、採取された海水から分離された微生物の数や、その分解活性を評価。これらのデータを基に、PHBの分解に寄与する微生物が多様であるほど、生分解率も高くなる傾向が確認されました。この発見は、生分解性プラスチックの開発において極めて重要な要素であり、今後の研究に影響を与えることが期待されます。

微生物の多様性を増やすために栄養源を追加した場合、さらに生分解性評価試験の期間が短縮される可能性があります。これにより、効率的に海洋で分解される生分解性プラスチックを短期間で開発することができるようになります。これらの研究成果は、2025年1月13日に「Journal of Hazardous Materials」に掲載され、多くの研究者や実務者に注目されています。

この研究は、環境問題に関心を持つすべての人々にとって喜ばしいニュースです。特に、海洋におけるプラスチック廃棄物の拡散を防ぎ、持続可能な社会を構築するためには、生分解性プラスチックの開発が不可欠です。今後も、PHB以外の生分解性プラスチックの研究を進め、微生物叢の解析を行うことで、より良い標準試験法の開発が期待されています。最後に、今回の研究の成果が実用化され、海洋環境の保護に貢献できる日が来ることを願っています。


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