未来の職人技をデジタルでつなぐ「CrafTouchプロジェクト」
日本の伝統工芸が直面する厳しい現実、後継者不足や少子高齢化。これらの問題に対処すべく、一般社団法人日本工芸産地協会とその他数社、大学が集結し、デジタル技術を活用した「CrafTouchプロジェクト」を2024年4月から沖縄の壺屋焼窯元「育陶園」で展開します。本プロジェクトは、伝統工芸技術の保存や次世代へのスムーズな技能伝承を目的とし、特に「ハプティクス」と呼ばれる触覚技術に着目しています。
プロジェクトの背景と目的
少子高齢化が進行する現代において、日本各地の伝統工芸は存続の危機に瀕しています。また、AI時代に突入し、人々の生活は急速に変化しています。その中で、伝統工芸もテクノロジーとの共存が求められています。「CrafTouchプロジェクト」では、デジタル技術を駆使して職人の技能を記録し、それを将来へと繋げることを目指しています。
プロジェクトの中心には、成長著しい壺屋焼があります。300年の栄光を持つこの窯元は、育陶園との協力により、陶芸職人の技能を「見えない形」で捉え、それをデジタルで表現する試みに取り組みます。
「日本工芸産地博覧会」への出展
このプロジェクトの成果が2025年6月16日から18日まで、大阪で開催される「日本工芸産地博覧会」で発表されることが決定しました。特に注目されるのは、「Project Cybernetic being – ロボットと触覚技術による職人技のデジタル共有」というテーマで、職人技をデジタルで共有することがどのように実現されるかが示されます。
技術の進化と可能性
本プロジェクトの鍵を握るのは、株式会社commissureが開発した「SenseFuse™」という装着型ハプティックセンサです。この技術により、職人が日常的に行なっている動作や触覚をデジタル化し、記録することが可能になります。さらに、職人の動きや感覚を再現するロボットアバターを開発し、実際に職人と共に作業を行うという革新的なアプローチも検討されています。
未来の職人育成への期待
プロジェクトの実施にあたり、各参加機関は異なる専門分野の知見を役立てており、特に身の回りの物理的な体験をデジタル化し、若い世代が職人技に触れる機会を生み出すことに力を注いでいます。これにより、職人の技術は目に見える形で残されていき、その伝承がより容易に行なわれることが期待されます。
若手職人と連携する経験豊富な職人たちのスキルは、時間や場所の制約を超えて学ぶことが可能になるでしょう。このプロジェクトを通して、伝統工芸の継承がよりダイナミックな展示となり、未来につながる新たな形が形成されることでしょう。
プロジェクトメンバーの声
プロジェクトには数多くの研究者や職人が携わっています。原岡知宏氏は、「伝統工芸の技能伝承は重要な課題であり、このプロジェクトがその解決に寄与することを期待しています」とコメントしています。また、高江洲若菜氏は、「新たな手法を導入することで、職人技の継承が進むことを願っています」と語っています。
参加団体について
このプロジェクトには、日本工芸産地協会や有限会社育陶園、慶應義塾大学、名古屋工業大学、株式会社commissureなどが関わっており、皆が一体となって未来の職人技を守るために活動しています。
二人三脚での技能融合は、視覚と触覚を通じた新しい体験を通じて、職人技の素晴らしさを次世代に伝える手助けをすることでしょう。日本の伝統工芸の未来に向けたこの取り組みは、確かな希望を乗せて進んでいます。