DXとは「人」による変革
デジタル変革(DX)という言葉が製造業界でも頻繁に使われるようになりましたが、その本質は単なる技術の導入だけではありません。株式会社パブリカが提供する「製造業DX事例データベース」をもとに、多くの成功事例を分析した結果、製造業DXを実現するためには「人」の力が不可欠であるという結論に達しました。特に、現場の課題を見つけ出し、効率的な業務プロセスを構築する能力が求められています。
製造業DXデータベースの活用
2026年7月時点で約4,000件もの製造業におけるDX事例が蓄積されています。このデータベースを活用した分析では、製造業におけるDXの進展は以下の5つの力によって支えられていることがわかりました。
1.
現場課題を発見する力
2.
業務プロセスを整理する力
3.
データを活用する力
4.
AI・デジタル技術を使いこなす力
5.
関係者を巻き込む力
これらの力は、製造業DXを進めるための基盤となります。
1. 現場課題を発見する力
製造現場には、非効率なプロセスや属人化が多く見られます。これらの問題を広く認識し、DXによって解決すべき課題を適切に言語化する力が必要です。例えば、株式会社樋口製作所では、IoTセンサーとAIを活用して、熟練技術者の暗黙知を形式知化することで属人化を解消し、設備の高稼働を実現しました。このように、現場の具体的な課題を見出し、それを解決する手段を検討することがDXの第一歩です。
2. 業務プロセスを整理する力
現場の業務がどのように流れているのかを把握し、整理する力が求められます。業務プロセスをAs-Isとして明らかに理解した後、理想的な業務プロセス(To-Be)を設計するために情報を整理することが大切です。例えば、キヤノンITソリューションズでは、様々なデジタル技術を組み合わせて設計から保守までのプロセスを統合しています。このような取り組みが業務の効率化に繋がるのです。
3. データを活用する力
製造業では、多様なデータが蓄積されていますが、それらをどのように活用するかが鍵となります。データを収集し、可視化、分析する能力は、適切な業務判断に直結します。ファイザーの事例では、AIとデータ分析を用いて製造供給チェーンの最適化を図り、サイクルタイムを短縮させることに成功しました。このように、データによる分析は業務改善に大きく寄与します。
4. AI・デジタル技術を使いこなす力
AIやIoTなどの先進技術を業務解決に結びつける力も重要です。単に技術を導入するのではなく、その技術がどのように自社の業務に適用できるかを考え、実践する力が求められます。川崎重工業では、AIとエッジコンピューティングを駆使して作業分析を行い、鉄道保守の効率化を図りました。
5. 関係者を巻き込む力
DXを成功させるには、経営層や現場、IT部門など、さまざまな関係者を巻き込む力が必要です。全社的なDX推進には、関係者の協力が不可欠であり、西日本旅客鉄道の「Work Smile Project」では全社員を巻き込んだDXの推進が図られました。このように、関係者を一丸とすることで、技術導入が業務に定着しやすくなります。
これからの展開
ものづくり新聞では、製造業DX事例データベースを活用し、様々なテーマに関する分析を継続的に行います。さらに、製造業向けDX教育プログラムである「Innovation Maker Academy」にもこれらの知見を活用し、企業ごとの課題解決に向けた学習コンテンツを充実させていく予定です。製造業を支える力を養成することで、将来のものづくりの未来を切り拓くお手伝いをして参ります。