水産養殖業が直面する厳しい現実とその動向
日本の水産養殖業界が現在、厳しい状況に直面しています。株式会社帝国データバンクの調査によれば、2025年の1月から8月の間で、水産養殖業者の倒産は7件、休廃業や解散は20件に達し、合計で27件もの企業が市場から姿を消しました。この数は前年通年の19件を上回っており、過去10年で見ても最も多い件数になる見込みです。
このような厳しい状況の背景には、気候変動の影響による海水温の上昇が大きく関与しています。水温が上昇すると、稚魚の死滅率も増加し、成長が阻害されてしまいます。また、飼料の価格も高騰しており、特に輸入飼料に依存している養殖業者にとっては、経営に多大な影響を及ぼしています。
実際、2024年度の業績動向を見ると、利益を減らした「減益」企業は29.5%に達し、赤字企業は34.1%と、3年ぶりに3割を超えました。これにより、業績悪化を示す企業の割合は63.6%にも達しています。この数字は前年の49.6%からの急上昇を意味しており、養殖業全体の厳しい現実を浮き彫りにしています。
さらに、急激な円安が輸入飼料の価格に悪影響を及ぼし、特に配合飼料の原材料である魚粉は、3年間で約60%も値上がりしています。このようなコストの増加は、最終的に養殖業者の利益を圧迫し、多くの事業者が経営の継続を断念せざるを得ない状況に追い込まれています。
また、赤潮の発生や気温の急上昇も、水産物の育成に影響を及ぼしています。最近では、特に高級魚とされるマダイの養殖業者が輸出市場、特に中国での輸入制限措置に直面しており、国内市場でも物価高背景に魚価が低迷しています。このような苦境を乗り越えるため、一部の養殖業者では、ふるさと納税や通信販売などの新たな販売チャネルの強化に取り組み、単価を引き上げる努力をしています。
業界全体として、持続可能な水産業を目指して養殖事業への期待は高まっているものの、今後も飼料の安定供給や自然環境の変化への対応といった課題解決が急務と言えます。これまで以上に、技術革新や新しいビジネスモデルの導入が求められる時代が到来しているのかもしれません。
今後の水産養殖業がどのように変化し、持続可能な業界として成長していくのか、注視していく必要があります。