舘鼻則孝の個展「Sacred Reflections」
2025年10月4日から11月15日まで、東京・天王洲のKOSAKU KANECHIKAにて、舘鼻則孝の新作個展「Sacred Reflections」が開催されます。この展覧会では、「和歌」と「鏡」という二つのモチーフを介して、文化の継承に関する深い問いを投げかけます。
文化継承のテーマ
「和歌」は、日本の詩の代表的な形であり、古くから伝えられてきた文化の象徴でもあります。和歌は詠まれることでその美しさを強く印象付け、書写されることでその内容が世代を越えて受け継がれています。本展では、舘鼻が自身で選び書写した『古今和歌集』の和歌を使用し、その行為がどのように日本語の美しさを表現するのかを探求します。
一方、「鏡」は、単なる物としての役割を超え、文化の記憶を映し出し、鑑賞者に自らの背景を振り返らせる役目も果たします。作品と向き合うことで、鑑賞者自らも文化の継承に責任を持つことを示唆しています。舘鼻は次のように説明します。「鏡は記憶の器となり、詩的な思考が時を超えて静かに刻まれていきます。書写を通じてもたらされる新たな視点は、伝統の静止を打破し、繰り返されることによって受け継がれる」
螺髪の美しさ
本展で展示される作品は、色彩豊かで精緻なもので、舘鼻がこれまで旅で撮りためた「雲」の写真と彼自身による和歌の書写が組み合わさっています。和歌に込められた情感は、現代に新たな色を加えることで、観る者に深い感動を呼び起こします。観客はただ作品を見るのではなく、自己と文化の対話を促され、自らの文化的背景を再考することを求められます。
本展に収録される和歌
以下の五首の和歌が本展では特に重要な位置を占めています:
1. ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは在原業平
2. 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに小野小町
3. ひとはいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける紀貫之
4. 今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな素性法師
5. 久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ紀友則
これらは日本最古の勅撰和歌集『古今和歌集』からの抜粋で、日本文化の源流を知る手がかりともなるものです。和歌は季節感や人への思いやり、さらには無常観を表現しており、日本独自の美意識が根付いています。
技術とコラボレーション
本展では、富士フイルムが開発した「高輝度メタリックインクジェット技術」が用いられており、これによって作品には極めて高い金属的な表現が施されています。この技術は、粒子配向技術を応用したもので、さまざまな質感やグラデーションのコントロールを可能にします。これにより、舘鼻の作品はインクジェット印刷の域を超えた立体的な表現が実現されています。
まとめ
「Sacred Reflections」は単なるアートの展示にとどまらず、文化の理解と継承を促す重要な場となっています。日本文化の美しさや精神性に光を当て、過去と現在の接点を見出す機会でもあるこの個展には、多くの方々に訪れてほしいと思います。入場は無料ですので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。