第16回認知症ケア実践・研究報告会が開催されました
10月28日、東京都中央区のベルサール汐留にて、「第16回認知症ケア実践・研究報告会」が開催されました。全国に370以上の介護事業所を運営するメディカル・ケア・サービス株式会社が主催するこの報告会は、介護業界内での最新の実践事例を共有し、認知症ケアの質を向上させることを目的としています。
認知症ケアの専門性を追求
メディカル・ケア・サービスは1999年に設立され、認知症対応型共同生活介護「愛の家」を中心に事業を展開しています。毎年開催されるこの報告会では、全国各地の事業所で実践されている成功事例が紹介され、介護職者や関係者らが集まり意見を交わします。今回は、特に推薦された国内の7つの事業所と中国拠点の1事業所が発表を行いました。
受賞事例:愛の家グループホームことづか
中でも特に注目を集めたのは、「愛の家グループホームことづか」が受賞した“最多得票賞”です。岐阜県岐阜市に位置するこの施設から、インドネシア出身のスタッフ、フダさんが発表を行いました。彼女は、来日後に直面した文化や言語の壁を乗り越えながら、利用者とのコミュニケーションをどう深めたかの経験を語りました。
フダさんは、日本語特有の言い回しを理解するのに苦労したこと、そしてそれを通じて利用者の気持ちを理解することの大切さを学んだと述べました。また、翻訳リストの作成や母国の料理を紹介することで、文化交流を促進する取り組みも行っていることを共有しました。そして、「言葉は人と人を隔てる壁にも、心をつなぐ橋にもなり得る」という彼女のメッセージが多くの参加者の共感を呼び起こしました。
利用者も登壇!
さらに特筆すべき点として、愛の家グループホーム高岡美幸の発表では、初めて利用者自らが登壇し、自分の思いを語りました。彼女は、自身の体の自由が制限されているにも関わらず、やりたいことがたくさんあると語り、特別扱いされることへの抵抗感を表示しました。「障害があっても私は私。私たちが認知症を変えていきたい」との力強い言葉は、参加者の心に響きました。
参加事業所の多様な事例
他にも、さまざまな介護事業所がそれぞれのユニークな取り組みを紹介しました。愛の家グループホーム東浦和(埼玉県)は「ハンデがあっても人生を楽しむ力を信じて」をテーマに発表し、愛の家グループホーム大阪都島中通(大阪府)では「都島のとある一日」について話されました。また、愛の家グループホームなかしべつ(北海道)や小田原前川(神奈川県)の発表も印象的でした。中国からは興城康養美邸ケアホーム楓樹苑が登場し、自由な生活を実現するための取り組みを発信しました。
今後への希望
メディカル・ケア・サービスは、利用者が当たり前の生活を実現できるようにサポートすることを使命とし、今後も「人」と「人」をつなぐコミュニケーションや関係性の構築に力を入れていく方針です。今回の報告会を通じて、認知症ケアに対する理解や意識が高まり、新しい試みが生まれることに期待が寄せられています。来年度の報告会も、多くの成果が集まる場になることでしょう。