アンモニアバンカリングの新たな幕開け
株式会社商船三井が伊藤忠商事と協力し、アンモニアバンカリングの実証に関する覚書を締結した。この取り組みは、次世代のクリーンエネルギーとして期待されるアンモニア燃料の社会実装を目指したもので、今後は実船を利用してシンガポール沖で具体的な共同開発が進められる予定だ。協力の成果として、2027年下期にはアンモニアバンカリング船とアンモニア燃料船を市場に投入する計画だ。
国際的な取り組みと背景
国際海事機関(IMO)は、2050年までに海運からの温室効果ガス(GHG)をゼロにするという大きな目標を掲げている。この目標を実現するため、今年4月にGHG排出量を減少させるための条約改正案が承認された。その中には、舶用燃料を低排出燃料に変換するための制度や、ゼロ・エミッション船の導入に対する経済的なインセンティブが含まれており、具体的な取り組みが進められている。
中でも、アンモニアはゼロ・エミッション燃料としての有望性が高く、多くの海事関係者がその利用を検討している。今回のバンカリング事業は、海事と燃料供給業界の接点ともなり、特に燃料供給の最前線を担う重要な設備として脚光を浴びている。
具体的なプロジェクト内容
商船三井は、中国船舶集団青島北海造船有限公司と連携し、2026年から2027年にかけて、世界初のアンモニア二元燃料ケープサイズバルカー3隻を建造。これにより、商船三井は定期用船のサービス提供を行う。
一方、伊藤忠商事は2025年6月に5,000m³型の新造アンモニアバンカリング船を発注しており、佐々木造船での建造が進められている。2027年に竣工予定のこの船により、安全な舶用アンモニア燃料の供給方法が確立され、シンガポールなどの主要海上交通のハブでの事業化を図る。
脱炭素社会に向けて
アンモニアへの関心が高まり、海運業界でもこのクリーンエネルギーを戦略的に取り入れる動きが加速している。商船三井も、2050年までのネットゼロ・エミッションを実現するため、「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」に基づき、アンモニアを活用する方針を掲げている。
商船三井と伊藤忠商事の協業によって、脱炭素化社会の実現に向けた重要なステップが踏まれることになるだろう。
この共同の取り組みは、未来の海運業界における持続可能な燃料供給のモデルケースとなることが期待されており、国際的な環境目標に応じた新たな波を起こすことになるだろう。これからの展開に注目が集まります。