モザンビークにおける医療危機
モザンビーク北部のカーボ・デルガード州では、武力衝突と治安の悪化が医療アクセスに深刻な影響を与えています。この地域では、約8年間にわたる紛争が続いており、40万人以上の人々が避難を余儀なくされている状況です。暴力の激化に伴い、医療施設の破壊や医療従事者の活動停止が相次ぎ、妊産婦や子供を含む多くの人々が必要な治療を受けることが困難になっています。
国境なき医師団(MSF)は、医療従事者や施設を保護する緊急性を訴え、増加する避難民に対して人道援助の強化を呼びかけています。その中でもカーボ・デルガード州の医療施設は、半数以上が完全または部分的に破壊されアップデートし続ける事態に直面しています。
暴力による影響
国連の報告によると、2025年以降、暴力の激化により4万3000人以上が新たに避難を強いられ、特に2025年5月だけで13万4000人が影響を受けたとされています。暴力は隣接するニアサ州へも広がりを見せ、カーボ・デルガード州のマコミアでは、武装集団の襲撃によりMSFを含む援助活動は一時中断を余儀なくされました。
一方、医療施設の多くは機能すらしていません。マコミアで以前に存在した7つの医療施設のうち、現在稼働しているのはわずか1つのみ。これにより、医療サービスを求める住民には想像以上の影響が出ています。
医療活動の中断
具体的には、MSFは治安が悪化したために何度も活動を中断せざるを得ない状況にあり、2025年にはモシンボア・ダ・プライアを含む多数の地域でアウトリーチ活動を数週間にわたって停止しました。これにより、多くの住民が必要な医療を受けられず、慢性的な病気や妊娠中の女性への対応が遅れています。
MSFは基礎医療やHIV治療、性と生殖に関する医療、さらには心のケアも行っていますが、その活動が制約されている現実に直面しています。また、特に心理的な健康状態の悪化も懸念されており、住民が病気の状態を表現できず、必要な治療を受けられない場合が多いとMSFのヘルスプロモーターは指摘しています。
人道援助の重要性
モザンビークの医療危機において、支援の拡充は急務です。MSFの医療プロジェクトが行われている地域では、妊婦や慢性疾患のある人々が特に脆弱であり、避難生活を余儀なくされた人々の医療ニーズは高まっているからです。
「ある村では、深夜に陣痛が始まった女性が危険な状況に置かれました。適切な医療が受けられず、合併症を引き起こしてしまったのです。地域の診療所が稼働していれば、適切なケアが受けられていたはずです」と、MSFの助産師は語ります。
未来に向けて
現在、モザンビークでは人道支援の資金削減が進んでおり、医療状況は悪化の一途を辿っています。国境なき医師団を始めとした国際的な支援が不可欠であり、より多くの協力が求められています。医療と生活の質が脅かされているこの地域で、私たちが人々の生を守るための支援をどう実現していくのかが、今後の重要な課題です。