持続可能な水産物消費を考える
2023年2月5日、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、新たに報告書『漁獲情報の消費者への提供とトレーサビリティ~EUと日本のルールと実施状況の比較~』を公表しました。この報告書は、水産物に関する表示やトレーサビリティの重要性を強調し、日本における改善の必要性について考察しています。
背景
近年、日本の水産物の輸入の約30%がIUU(違法・無報告・無規制)漁業に由来していると言われています。これは消費者にとっては深刻な問題であり、持続可能な漁業を実現するためには、消費者が正しい情報を基に責任ある選択をすることが不可欠です。
報告書では、EUの先進的な取り組みを参考にしつつ、日本でも消費者に対し環境に配慮した選択肢を提供する必要があると提言しています。水産物の「漁獲域」や「漁具」に関する情報は、実際の資源管理や生態系への影響を直接反映するため、消費者への明確な情報提供が求められます。
報告書の構成
報告書は全51ページから成り、次のような内容で構成されています:
1.
目的
2.
EUにおける漁獲域と漁具の消費者への伝達
3.
日本の水産物における漁獲域等の表示ルールと実施
4.
事業者間の情報伝達とトレーサビリティ
5.
まとめ
さらに、参考文献や資料が豊富に含まれており、EUの関連規則の条文対訳や消費者伝達の事例が紹介されています。
EUの新制度
EUでは、2010年に施行された漁獲証明制度が、IUU漁業由来の水産物の流入を防ぐ目的で導入されました。この制度では、漁獲証明書を通じて漁獲の情報を確認し、輸入時に必要な情報を提出することが義務づけられています。2026年からは、新たに設けられるITシステム『CATCH』により、この情報伝達が完全に電子化されることも発表されています。これにより、漁獲から消費者に届くまでの情報の流れが一貫して管理され、トレーサビリティが強化されます。
執筆者の意見
報告書の中で、一般社団法人食品需給研究センターの酒井純氏は、日本における漁獲情報の表示の難しさに触れつつ、消費者への正確な情報提供の重要性を指摘しました。「水産物だからこそ、消費者が選べる情報が必要です」と述べ、デジタル化が進むEUの事例を引き合いに出して、日本でも同様の進展を期待しています。
また、WWFジャパンの海洋水産グループの滝本麻耶氏は、「水産物の消費者もサプライチェーンにおいて重要な役割を持つ」と強調し、この報告書がトレーサビリティに対する社会的な議論を提起する一助となることを願いました。
結論
日本における水産物の持続可能な消費を実現するためには、消費者が正確な情報に基づいて選択できる環境を整えることが不可欠です。WWFジャパンが提案するこの取り組みが進むことで、持続可能な水産物市場の形成が進むことが期待されます。私たち消費者一人ひとりの選択が、未来の海を守るための大きな一歩となるでしょう。