日本語教育の新たな風、インドネシアに「すらら にほんご」を導入
インドネシアでの日本語教育の現状と課題
日本の労働市場において重要な役割を果たしているインドネシアは、技能実習生や特定技能人材の主要な送り出し国として知られています。しかし、急増する日本語学習ニーズに対応するための教員が不足し、教育の質にムラが生じていることが課題とされています。2023年度には約74,879人ものインドネシアからの技能実習生が日本に渡航しているものの、教員の不足や教育環境の整備が追いつかない状況です。特に送り出し機関(LPK)では、出国前の語学訓練が十分に行われないケースが多く、現地企業からは「日本語の運用力をさらに高める必要がある」との声も上がっています。
従来の日本語教育は、受動的な学習に偏りがちで、学習者同士の理解度にも差が見られるため、学習意欲の維持が難しいという現実があります。さらに日本政府が外国人材の受け入れを拡大する中で、求められる日本語能力はますます高まっています。これらの背景において、デジタル教材「すらら にほんご」の導入が大きな期待を集めています。
「すらら にほんご」の特色と導入の意義
株式会社すららネットが開発した「すらら にほんご」は、アニメーションを用いたインタラクティブな日本語学習教材です。PT. Fuji Bijak Prestasiというインドネシアの大手送り出し機関で導入され、2025年5月から本格運用が始まります。この導入は、インドネシアの技能実習制度において初の試みであり、現地での日本語教育の質を担当することを目指しているのです。
教材は、AIを活用したドリルと、習熟度に合わせたテスト、復習機能を揃えており、学習者が自身のペースで文字、語彙、会話を体系的に学ぶことができます。また、ジャカルタに位置するフジ・ビジャックは、これまで20年以上にわたって日本企業への人材派遣を行ってきた実績があり、今回の導入により、インドネシア・ブカシ市における訓練施設でデジタル授業がスタートしました。
教員研修の重要性と未来の展望
今回の導入に際して、6名の日本語教員が受けた研修も重要なポイントです。この研修では、実技テストや筆記試験が行われ、すららネットが認定する公認ファシリテーターとして全員が合格しました。この結果、安定した授業運営体制が整い、定期的なサポートが行われることにより、授業の質の向上も期待されています。
教員は、「すらら にほんご」の豊かな色彩とイラストが学習を楽しくし、生徒たちの意欲を引き出していると語っています。多様な学習スタイルに対応できるよう、リスニングや語彙、漢字など広範囲にわたる内容がカバーされており、生徒の効果的な学習をサポートしています。今後、フジ・ビジャックでは年間500人の訓練生に「すらら にほんご」を利用した日本語教育を展開する計画であり、同様の取り組みをインドネシア国内の他の送り出し機関へ広める意向も示しています。
まとめ
「すらら にほんご」の導入は、インドネシアにおける日本語教育の革新を象徴する試みです。デジタル教育を通じて人材の育成を図りながら、持続可能な教育モデルを確立する取り組みが進んでいます。すららネットは、教育の質向上に向けた挑戦を今後も続けていくことでしょう。これにより、さらなる日本語教育の充実と、インドネシアと日本の人材連携が一層深まることが期待されます。