沖縄の医師たちが国際誌に業績を発表
沖縄県立中部病院に所属する集中治療科の井澤純一医師と酒井亮裕医師、救急科の木全俊介医師と山口裕医師、さらに前任者でアメリカのピッツバーグ大学で教鞭を執る大久保雅史医師のチームが、研究成果を英語で執筆し、世界的に名高い医学雑誌であるCHESTに掲載されました。この論文は心停止患者の治療における重要な洞察を提供しており、医学界での注目を集めています。
CHEST誌とその意義
CHESTは呼吸器や集中治療の分野における権威あるジャーナルの一つで、2024年のインパクトファクターは9.5に達しています。この数値は、雑誌の論文がどれだけ引用されているかを示し、影響力の高い研究が掲載されることが期待されています。
研究の背景
近年、病院外で心停止を発症した患者の予後改善が見られるものの、依然として良好な状態とは言えません。心停止の後、自分の心臓が再び拍動を始めた場合でも、脳を保護するために集中治療室での全身管理が求められます。その中でも、動脈血二酸化炭素濃度(PaCO2)が脳血流に与える影響は極めて大きく、適切な管理が重要です。
これまでの研究では、PaCO2の正常範囲として、30-50 mmHgや35-45 mmHgが最適だとされてきましたが、ECMO治療を受ける患者に関してはその影響が十分に解明されていませんでした。具体的には、正常範囲の中で低い値(30-40 mmHg)と高い値(40-50 mmHg)が、予後にどう影響するのかは明確ではありませんでした。
研究の目的と結果
本研究では、日本救急医学会の病院外心停止レジストリデータベースを活用し、病院外で心停止を経験し、ECMO治療を受けた患者においてPaCO2の値とその後の機能的予後との関係を分析しました。
その結果、ECMO治療開始から24時間後のPaCO2が高い正常二酸化炭素群では、機能的予後が最も良好であったことが判明しました。これは、低い正常二酸化炭素群と比較しても統計的に有意な差であり、心停止後にECMO治療を受ける患者において、高い正常二酸化炭素レベルを維持することが、機能予後の改善につながる可能性が示唆されました。
今後の展望
この発見は、心停止患者の治療において新たな方針を示すものであり、医学界における心臓救命措置の改善に寄与する可能性があります。詳細な研究が進むことで、さらなる治療法の開発が期待されます。
参考リンク
Junichi Izawa, Shunsuke Kimata, Sho Komukai, Masashi Okubo, Akihiro Sakai, Tetsuhisa Kitamura, MD, Yutaka Yamaguchi. High Normocapnia and Better Functional Outcome in Patients Undergoing Veno-Arterial Extracorporeal Membrane Oxygenation After Out-of-Hospital Cardiac Arrest. Chest. 2025 Jan 19:S0012-3692(25)00062-5. doi: 10.1016/j.chest.2025.01.010. Online ahead of print.
病院情報
病院名: 沖縄県立中部病院
所在地: 〒904-2293 沖縄県うるま市宮里281番地
Webサイト: 沖縄県立中部病院
お問い合わせ
担当: 田里雅樹
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