臨床組織科学(COS)とStacey複雑性思考の新しい挑戦
株式会社DroRが推進する臨床組織科学(COS)に関する最新の論文が、国際学術誌『Frontiers in Psychology』のOrganizational Psychologyセクションに掲載されました。この論文では、Ralph Staceyが提唱した複雑性思考を原理に基づく確率主義(principled probabilism)として再構築し、組織変革を新たな視点から捉えています。
COSとは何か?
臨床組織科学は、複雑系科学や神経科学、組織心理学に基づいた理論的枠組みです。特にCOSは、組織の安定状態を再生産するための相互作用構造を論じることに焦点を当てています。この理論では、組織変革は単なる個人の行動の変容ではなく、むしろ「組織アトラクターの遷移」として考えられるべきだとされています。これにより、組織変革のプロセスをより複雑で動的なものとして理解する必要があると主張します。
COSの基本技法には、Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Designが含まれ、個人の行動と組織の変化を繋ぐ「emergence bridge」(創発の橋)が提唱されています。これは、個人と組織の変化の相互作用をより深く理解するための新しい視点を提供します。
Stacey複雑性思考の意義
Ralph Staceyが提唱した複雑性思考は、組織を静的でトップダウンに制御できるものではなく、相互作用の中で創発的に変化するものとして捉えます。この視点から、組織は経営者の意図や制度、感情、権力関係など多様な要因が絡み合って成り立っています。このアプローチをCOSに取り入れることで、組織変革を予測・制御する機械的なモデルから、相互作用によって変化する非線形プロセスへと視点をシフトします。
COSでは、組織の変革が単なる目標達成のための手段ではなく、新たな相互作用を創発するための条件を設計することが重要なのです。この考え方は、過剰な管理主義や単なる相対主義とも異なる、現実的なアプローチと言えるでしょう。
COSのprincipled probabilism
COSはprincipled probabilismという立場を取ります。この立場は、「結果を完全に制御することはできないが、特定の条件をデザインすることで、望ましい結果を導く確率を高めることができる」という考え方に基づいています。このため、過去の経験や成功事例から学び、特定の条件下での結果の確率を高めることができると主張します。
このようにして、COSは組織の安定状態を再生産するための新たな視点を提供します。Staceyの理論とCOSのprincipled probabilismを組み合わせることで、組織が複雑な適応系として機能することを理解し、その結果をより実証可能なものとすることが目指されています。
COSとStaceyの接続意義
COSがStaceyの思考を取り入れる理由は、組織変革が過度に決定論的に語られる危険性にあります。「このメソッドを導入すれば変わる」といった表現は、組織の実情を過小評価してしまうことがあります。COSは実践的技法を提供しつつ、その結果が必然でないことを強調し、失敗条件や検証可能命題を明示することで、より複雑な真実に対する誠実さを維持しています。
代表・山中真琴の言葉
代表取締役の山中真琴氏は、「COSにおいて最も重要なのは、組織を容易に変えられると信じないことです。組織は極めて複雑であり、結果を予測することは難しい。しかし、試行錯誤を通じて条件を整え、変化を生み出す確率を高めることは可能です」と語っています。このように、COSのアプローチは冷静な観察と実践を強調しています。
今後の展望
本論文は、COSの概念を整理し、さらなる理論的および実践的な発展に向けた基盤を提供するものです。今後もCOSの研究や実践が進むことで、より実効性のある組織変革のアプローチが生まれることが期待されています。
次回予告
5月26日には「臨床組織科学(COS)とサイバネティクス」というテーマで、Loop Conversion Designの理論的基盤について詳しく解説します。お楽しみに!
株式会社DroRについて
DroRは、複雑系科学と神経科学を基に組織の見えない構造を観察し設計する研究ファームです。高い専門性を持つ専門BPOサービスや組織開発などを通じて、実践と理論を融合させる循環を重視しています。其の基盤にあるCOSの考え方は、今後の組織論に新たな視点を与えることでしょう。