キヤノンが再生鉄をプリンティング製品に採用開始
キヤノンは、2025年に新たに発売するプリンティング製品に、使用済み複合機から分別した鉄材料を利用する再生鉄を採用すると発表しました。この取り組みは、環境に配慮した製品づくりに向けた一環であり、資源循環の促進を目指しています。
再生鉄導入の背景と意義
プリンティング製品には、オフィス向けの複合機や家庭用のインクジェットプリンターなどが含まれますが、これらの製品には従来、樹脂材料が主に利用されていました。しかし、鉄も重量比で2番目に多く用いられており、その中でも新たに電炉鋼板を採用することで、環境への負荷を大幅に削減できる可能性があります。電炉鋼板は、使用済みの製品から精准に分別された鉄を電気炉で製造するため、新しい資源の使用を抑え、資源循環率を向上させる効果が期待されます。
特に注目すべきは、鉄鉱石を原料とする高炉鋼板との比較です。再生鉄を使用することで、製造時のCO2排出量を約5分の1にまで減らすことができるため、企業の環境目標にも貢献します。
分別と供給の進化
キヤノンのグループ会社であるキヤノンエコロジーインダストリーでは、回収された使用済み複合機から鉄スクラップを高精度に分別しています。この作業により作り出される鉄スクラップは、純度が高められ、東京製鐵へ供給されています。2020年から2024年までの期間で、5,000トン以上の分別された鉄材料が供給される見込みです。
再生鉄の利用は、製品の寿命を延ばしつつも、限りある資源の活用を促進する重要なステップです。今後もキヤノンは、東京製鐵からの電炉鋼板を利用して、環境に優しいプリンティング製品の開発を進めていくでしょう。
資源循環率の向上に向けて
キヤノンのデジタルプリンティング事業では、資源循環率を高めることに注力しています。2022年度には約16%の循環率を達成しており、2025年には20%、2030年には50%を目指すとのことです。リユースとリサイクルを進めることで、再生資源の分別精度向上や再利用部品の採用を強化する所存です。
環境目標への取り組み
キヤノンは、1988年から「共生」の理念に基づき、環境保全活動を進めてきました。その一環として、2008年には「ライフサイクルCO2の改善」を環境目標に掲げ、これまで年平均で3.95%の改善を実現。今後もあらゆる活動を通じてCO2排出量の削減に努め、2050年までにはネットゼロ達成を目指しています。
環境に配慮した企業活動が求められる現代において、キヤノンの取り組みは先駆的な例と言えるでしょう。今後の展開に期待が寄せられています。