KPMGが発表した「Pulse of Fintech(2024年下半期)」
KPMGインターナショナルは、フィンテック分野での最新の投資傾向をまとめた調査「Pulse of Fintech(2024年下半期)」を公開しました。このレポートは、2024年のフィンテック市場がどのように変化しているのかを鮮明に示しており、昨年のデータと比較しつつ重要な知見が提供されています。
投資額の減少
本調査によると、フィンテックへのグローバルな投資額は2023年の約1,198億米ドルから2024年は956億米ドルに大幅に減少しました。取引件数も5,382から4,639に減少しており、これは市場の成熟や投資家の慎重な姿勢が影響していると考えられます。
特に、南北アメリカが約638億ドルを獲得し、その中でも米国が507億ドルを占めています。この地域の取引数は2,267件に達し、フィンテック投資の中心地であることが示されています。一方、EMEA地域やアジア太平洋地域はそれぞれ203億ドルと114億ドルの投資を受けましたが、その規模にはまだ大きな差があります。
M&A取引の変動
M&Aに関しても興味深い動向が見られました。世界のM&A取引額は前年比602億米ドルから496億米ドルに減少しましたが、第3四半期から第4四半期にかけての増加が顕著で、74億米ドルから142億米ドルにほぼ倍増しています。このことは、フィンテック企業同士の再編成や新たな提携を模索する動きが活発化していることを示唆しています。
投資分野の特色
注目すべきは、投資額が最も多かった領域が決済となった点です。決済関連の投資は310億米ドルに達し、前年の172億米ドルから大幅に増加しています。また、デジタル資産や通貨、レグテック、ウェルステックなど他の分野でも前年比での成長が見られ、これらの技術が急速に進化していることが明らかになりました。
特にレグテックは、44億米ドルから74億米ドルへと投資が増加しており、規制遵守の重要性が高まっている事実を反映しています。
VC投資の動向
世界のベンチャーキャピタル(VC)投資は減少の傾向を示しており、2023年の269億米ドルから2024年には196億米ドルに減少しています。しかし、EMEA地域では逆に前年比で増加し、51億米ドルから58億米ドルに達しました。南北アメリカやアジア太平洋地域では減少が目立ち、特にコーポレートVC投資は138億米ドルから99億米ドルへと落ち込みました。これは、投資環境が依然として厳しいことを示しています。
KPMGの役割
KPMGは、グローバルな監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する企業として、常にフィンテック分野の動向を注視しています。今回の調査もその一環であり、保木健次氏が日本国内での担当者としてその情報を発信しています。このような調査を通じて、フィンテックの未来に対する洞察が広がり、投資家や企業にとっての貴重な参考資料となるでしょう。
世界的なフィンテックの動きに目が離せない今、KPMGのデータは今後の市場戦略を考える上で重要な手がかりとなることでしょう。