肺がん治療における多遺伝子検査の普及状況と課題を探る
近年、日本における非小細胞肺がん(NSCLC)患者の遺伝子検査が急速に普及していますが、興味深いことに未実施の患者も約3割存在している事実が明らかになりました。この現状を探るべく、株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が保有する医療ビッグデータをもとに行われた研究の成果をご紹介します。
研究の背景と目的
本研究は、関西医科大学や肺がんの支援団体である一般社団法人アライアンス・フォー・ラング・キャンサー(A4LC)、近畿大学、GHCの共同によるもので、全国300病院におけるStage IV非小細胞肺がん患者24,047人を対象に、遺伝子検査と初回治療の実態を分析しました。2019年4月から2024年5月までの研究期間を通じて、どのように検査が普及しているのか、また未実施の背景には何があるのかを探ることが目的です。
多遺伝子検査の急速な普及
研究によると、かつては少数だった5種類以上のドライバー遺伝子を調べる患者も、2021年後半から急増し、2023年半ばにはさらに多くの遺伝子が検査されるようになりました。特に、EGFR、ALK、ROS1は高い検査率を保ちながら、次第に他のドライバー遺伝子の検査率も上昇しています。これにより、患者はより効果的な分子標的薬を選択できる環境が整いつつあります。
特定のドライバー遺伝子に対する治療
分子標的薬は、がんの原因となる特定の遺伝子変異を標的とする治療法で、非小細胞肺がん治療においてはEGFRやALKの他に、METやRET、KRAS、HER2といった比較的希少なドライバー遺伝子への治療法も増加しています。これにより、患者の個別のがんに応じた治療が可能となっています。
検査未実施の課題
しかし驚くべきことに、本研究では約3割の患者が未だに遺伝子検査を受けていない状況が続いていることが分かりました。この数字は、地域や年齢による差は見られないものの、高齢者ではやや検査未実施率が高いという特性が見られます。未実施の背景には、患者の全身状態や腫瘍組織の不足、治療開始の急務といった臨床的な要因が影響しているとされています。
特に、遺伝子検査を受けなかった患者の中で25.4%が、その後の薬物療法も受けていないことが報告されており、これには全身状態により治療が困難と判断されたケースも含まれる可能性が指摘されています。
未来への展望
研究チームは、遺伝子検査を受けていない患者が存在する現状を踏まえ、医療者と患者がより良い治療のために「共同意思決定」を行うことが重要であると強調しています。患者への十分な情報提供を進め、検査の重要性を理解してもらうことが必要です。さらに、検査結果を適切な治療に結びつけるための取り組みが求められています。
絘に遺伝子検査の普及を促す施策の必要性
また、本研究の結果は、今後のがん治療における遺伝子検査の重要性を再確認させると同時に、検査受診率を向上させるための様々な施策を考える必要があることを示唆しています。この調査が、患者が最善の治療を受けるための助けとなり、今後の医療実践において重要な役割を果たすことを期待しています。