株式会社MeDiCU(大阪市)は、中外製薬株式会社(東京都)の業務提携を発表しました。これにより、同社が提供する「OneICU」という救急・集中治療のデータベースが、中外製薬の新薬開発に役立てられることになります。
「OneICU」は、日本全国の8つの大学病院と市中中核病院から集めた約87,000症例のICU患者の生体情報を集約したもので、世界最大規模の医療ビッグデータを誇ります。このデータベースには、1分ごとに測定されたバイタルサイン情報、治療介入の時系列データ、重症度スコアなどが含まれています。急性疾患の治療においては、患者の状態が瞬時に変化するため、適切なタイミングでの介入が求められます。
中外製薬は、この「OneICU」を活用して、患者選定を効率化し、臨床試験における新薬開発の円滑化を図ります。従来、臨床試験では適切な患者群を見つけることが障壁となっていましたが、このデータを基に患者の特徴を明確化することで、よりスムーズな進行が期待されます。それにより、新薬の開発が迅速化し、救急疾患に対する治療薬の市場投入が加速する見通しです。
中外製薬のデジタルソリューション部データサイエンスグループの塚田啓介氏は、本提携の意義について「急性疾患に対する創薬アプローチの骨子になり得る」と語ります。同社は、適切なデータ解析への依存を強調し、「OneICU」の高品質なデータが、急性疾患の詳細な分析を可能にするとしています。
一方、MeDiCUの代表取締役、木下喬弘氏は、急性疾患の治療においては的確なタイミングでの介入が必要であることを強調。また、疾患ごとに異なる病態を理解し、患者一人ひとりに最適な個別化された治療を提供することが求められると述べました。
「OneICU」は、従来の医療データが抱える問題を克服するため、自然言語処理を用いたデータクリーニング技術で構造化されたデータベースです。これにより、ICUでの日々の治療データを一元的に管理し、医療現場での実用化が期待されます。さらに、2025年には33施設とのデータ提供契約を結ぶ予定で、データ数は30万症例を超える見込みです。
この取り組みにより、急性疾患の新薬開発が加速されるだけでなく、質の高い医療の実現に向けての新たな道が開かれることが期待されます。MeDiCUと中外製薬の提携により、医療業界における革新的な変化が訪れるでしょう。これにより、医療の現場で求められているAIの進化も加速することが期待されます。