岡山大学が解明した味覚障害の新たなメカニズム
岡山大学の研究グループが、酸味に特化した味覚障害の原因を解明する重要な発見を報告しました。 2025年7月18日、同大学の学術研究院医歯薬学域で行われたこの研究では、味細胞におけるシナプスの機能的役割に焦点を当てました。
研究の背景と目的
味覚は、私たちの食事経験を豊かにする重要な感覚です。しかし、様々な要因により味覚障害が生じることがあります。特に酸味は、食事の楽しみだけでなく、健康維持にも重要な役割を果たしています。これまでの研究では、味覚情報の処理に関わる神経メカニズムが複雑であることがわかっていましたが、酸味に特化した障害の具体的なメカニズムは未解明でした。
この研究は、その中でも灰色の部分を少しでも解明することを目的としました。岡山大学の堀江謙吾助教と吉田竜介教授を中心とする研究グループは、味細胞のシナプスに関連する遺伝子を欠損させたマウスを作成し、それによる味覚機能の変化を観察しました。
研究の発見
研究の結果、シナプスに異常をきたしたマウスでは、酸味に対する応答が著しく低下し、他の基本味 — 甘味、うま味、塩味、苦味 — には影響が見られないことが判明しました。さらに、マウスの舌の組織を観察したところ、酸味を受容する細胞の維持ができていないことがわかりました。この発見は、酸味特異的な味覚障害が、味細胞のシナプス不全によって引き起こされる可能性があることを示しています。
この研究の成果は、2025年6月24日付の生理学系専門誌「The Journal of Physiology」に掲載され、広く注目を集めています。また、岡山大学は2025年7月2日にこの研究の成果を公開しました。
未来の研究への期待
吉田教授は、「なぜ酸味を感じる味細胞だけが化学シナプスを利用しているのか」といった疑問を呈し、この研究が味覚の理解を深める一助となることを期待しています。今後の研究が進むことで、味覚障害に対する新しい治療法の確立や、食品産業への応用が期待されます。
この研究成果は、味覚障害の新たな理解を促進し、味細胞のシナプス機能の重要性を再認識させるものとなるでしょう。また、味覚の持つ複雑さを探求し続けることが、我々の食文化や健康にどのように寄与していくのか、今後の研究に注目が集まります。