小型光通信端末による新たな通信革命
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、衛星や高高度プラットフォーム(HAPS)に搭載できる小型光通信端末を用いた2 Tbit/sの空間光通信に成功したことを発表しました。この成果は、通信技術における重要な進展であり、今後の非地上系ネットワーク(NTN)構築に向けた大きなステップとなります。
実験の概要と背景
今回の実験では、NICTが開発した二つの異なるタイプの小型光通信端末が使用され、情報の送受信が行われました。特に、持ち運び可能であっても2 Tbit/sのデータ通信を達成したという点で、これは極めて重要な成果です。従来の空間光通信は主に大型の装置に依存していましたが、新たに開発された端末は小型化されており、そのための設計にはさまざまな工夫が施されています。
実験は東京都小金井市にあるNICT本部と、7.4km離れた調布市に設置された端末間で行われました。両端末が異なる機能を持ち、日中の都市部という高度な環境下でも安定して光通信を実行しました。それに必要な通信の安定性を保つために、特に都市部特有の「大気の揺らぎ」にも対応できる技術が導入されています。
積み重ねてきた技術的課題の克服
空間光通信技術には、数多くの技術的な課題があります。既存の技術では、大型機器を用いる必要があり、小型の衛星や移動体に搭載することが難しいという制約がありました。NICTはこの制約を克服するために、以下のようなアプローチを取っています:
1.
新規設計部品の開発:宇宙環境下でも使用できる口径9 cm級の高性能望遠鏡。
2.
商用パーツの改修:従来の部品を改良し、高出力の光に耐えるように対応。
3.
既存部品の再利用:データセンター向けの高速光トランシーバをモデムとして再利用。
これらのアプローチによって、必要な機能を維持しつつ、端末全体のサイズ、重さ、消費電力を最小限に抑えることに成功しました。
実用化に向けた今後の展開
この成功はBeyond 5Gや6Gへの移行に向け、非地上系ネットワークの実現に一歩近づいたともいえます。端末の小型化をさらに進め、2026年には新たな実証実験を予定しています。その中では、実際の移動体を使用して通信性能を検証する計画です。
また、NICTはキューブサット衛星のミッションにも取り組んでおり、今後の実用化に向けた重要なステップとなるでしょう。この取り組みでは、低軌道の衛星と地上間での通信性能を検証し、最終的にはテラビット超えの光通信リンクを実現することを目指しています。
結論
今回の成果は、現在の通信インフラの枠組みを超える新たな可能性を秘めています。これからの展開に注目が集まる中、小型光通信端末の技術革新は、通信業界におけるゲームチェンジャーとなることでしょう。