株式会社山一ハガネが挑む新たな素材選び
愛知県名古屋市に本拠を置く株式会社山一ハガネは、中国の特殊鋼メーカー、江苏天工工具新材料股份有限公司(以下、TG社)と独占販売契約を締結し、新たな粉末ダイス鋼を日本市場に導入することを発表しました。この契約は、投資環境や自動車産業の変化、カーボンニュートラルに対応するための取り組みとして位置づけられています。
高評価のTG社
TG社は高速度鋼やダイス鋼等、特殊鋼分野において世界有数の生産実績を誇る企業で、粉末冶金を用いた大規模生産体制を早期に確立しています。技術力、供給力ともに世界的な評価を受けており、2007年に香港証券取引所に上場、さらには2020年にはハンセン指数の構成銘柄にも採用されるなど、グローバルな信頼性を築いてきました。
特に、同社の粉末ダイス鋼は自動車業界の超ハイテン材の実用化に寄与することが期待されており、日本国内では山一ハガネを通じて流通することになります。この新たな素材は、超ハイテン材による車体軽量化を実現するための重要な要素となります。
技術的課題と新素材の選定
自動車産業では環境への配慮から新しい材料の導入が求められています。特に、超ハイテン材は高強度ながらも軽量で、製造工程においては金型への負荷が非常に高くなるという技術的課題が存在しています。従来の金型材では耐久性や成形性の問題が浮上し、新たな選択肢が求められています。
山一ハガネは、こうした課題に応えるために粉末ダイス鋼「YSTG8(SF)」を導入しました。この素材は、高い硬度、耐摩耗性、そして高靱性を兼ね備えており、難加工材でも長寿命を実現することが期待されています。また、JIS/SKD11相当の「YSTG11」は国際的にも評価されており、日本国内での信頼性、コスト効率、汎用性を兼ね備えた新たな定番鋼種としての活用が期待されています。
グローバルな選択肢の提供
山一ハガネは、特殊鋼の商社として1927年に設立されて以来、日本のモノづくりに寄り添った取り組みを続けてきました。特に、現在求められるのは高品質な製品を維持しつつ、コストを削減し、納期を短縮するという課題です。その中で、国際的な素材の選定力が求められています。
TG社との契約締結を通じて、山一ハガネはグローバル調達のニーズへと応えられる体制を整えました。国内外の競争が激化する中で、現場の課題に直面する製造業者に対し、山一ハガネは「真に使えるもの」を選別し、最適なソリューションを提供することを目指しています。
未来への展望
山一ハガネは、今後も製造業者とともに新たな材料の可能性を探求し、日本のモノづくりの未来を支え続けるでしょう。特に、粉末ダイス鋼の導入により、自動車業界における製造工程に革新をもたらし、持続可能な社会の実現に向けた貢献をしていく考えです。
この取り組みが、未来の新しい素材選びの基盤となり、更なる発展を促進していくことが期待されます。山一ハガネの挑戦は、特殊鋼業界の新たな1ページを切り開くことになるでしょう。