慶應義塾が次世代AIデータセンター向けの光ファイバ技術を開発

慶應義塾大学の新川崎先端研究教育連携スクエアに所属する研究チームが、AIデータセンターの進化を後押しする革新的な技術を発表しました。この技術は、屈折率分布型プラスチック光ファイバ、いわゆるGI型POF（Gradient Index Polymer Optical Fiber）を用いたもので、特に次世代のAIデータ処理において不可欠な要素となる高密度・低遅延の光通信を実現するものです。それでは、この研究の背景と成果について詳しくご紹介します。

AIデータセンターの急速な進化

近年、生成AIの急速な普及が進む中、大規模なデータセンターでは、従来の通信性能をはるかに上回る超大容量で低遅延の光通信が求められています。特に、AI処理に不可欠な多数のGPUやアクセラレータを接続する際には、高速かつ安定した通信環境が整っていることが重要です。これによって、機器同士の連携が円滑に行われ、システム全体の処理能力を向上させることが可能となります。

研究の詳細

新川崎先端研究教育連携スクエアの小池康博教授（慶應フォトニクス・リサーチ・インスティテュート所長）と村元謙太特任講師を中心にした研究グループは、GI型POFの一括多心化技術を確立しました。これにより、1心あたり最大106.25 Gbpsの超高速伝送が可能になると同時に、従来のガラス製光ファイバで求められていた多心化工程を簡素化することが実現しました。この成果によって、コスト削減と信号のノイズ・エラーの抑制が期待されています。

光ファイバの利点と未来

GI型POFは、信号の品質が大幅に向上するという特性があります。ガラス製光ファイバと比較して、信号のノイズやエラーを減少させることで、伝送の補正処理が簡素化されており、これにより低遅延かつ低消費電力での光通信を実現する可能性が広がります。

この研究成果は、光通信技術の世界的な会議であるOFC 2025において論文として採択されるなど、国際的な注目を集めています。