シネマ歌舞伎『怪談牡丹燈籠』のトーク付き上映会
2023年秋、全国33館で上映中のシネマ歌舞伎『怪談牡丹燈籠』。この上映会では、著名な落語家である三遊亭わん丈氏がトークを行い、作品への理解をさらに深める貴重な機会となりました。特に、わん丈氏は今年春に真打に昇進し、名実ともに活躍する若手落語家です。
作品の背景
『怪談牡丹燈籠』は、全22章からなる壮大な物語で、武士の復讐劇と貧乏夫妻の生活支援が交錯するストーリーが展開されます。観客の中には、どのようにこの長大な物語が落語として消化されるのかに興味を持つ人も多かったことでしょう。実際、落語では物語の一部に焦点を当てることが一般的ですが、全体を通して見ると、その深い構造に驚かされます。
奇数章と偶数章の対比
わん丈氏は、物語の奇数章が武士の復讐をテーマにしているのに対し、偶数章が伴蔵とお峰の夫婦の生活に焦点を当てている点を説明しました。特に、偶数章の部分は庶民の欲望や笑いを描くため、落語にしやすいと言います。このような解釈の中で、落語がどういったユニークなスタイルで進化してきたかを感じ取ることができました。
シネマ歌舞伎と落語の違い
さらに、シネマ歌舞伎における演出の違いについても触れました。特に、役者であり落語家である坂東三津五郎の演技について「美しい所作と男らしさが融合している」と称賛します。「三津五郎さんは高座に上がりお湯を飲む仕草も格好よく見えます。通常なら楽屋で済む行為ですが、彼の魅力があればこそ成立する」と語り、演技者としての深い理解を示しました。
円朝の人生と作品のメッセージ
また、わん丈氏は、シネマ歌舞伎に登場する三遊亭円朝の人生にも言及しました。彼の生涯が多くの人間関係の中での試練を伴ったものであり、それが彼の作品に反映されていると考えています。特に、幽霊や恐怖がテーマの作品でも「実際の人間関係こそが怖い」と語り、その哲学が作品のテーマに通じていることを感じさせます。
最後に
この上映会は、観客にとってシネマ歌舞伎『怪談牡丹燈籠』の新たな魅力を再発見する機会となりました。わん丈氏の深い分析と独自の視点が融合し、参加者に多くのインスピレーションを与えました。作品を視聴した後にはぜひ、原作、落語、歌舞伎の各種スタイルを比較して楽しむことをお勧めします。様々な視点から新たな発見があることでしょう。