皮膚浸透成分をリアルに可視化する新技術の誕生
日本メナード化粧品株式会社が、愛知県名古屋市の名古屋大学との共同で、革新的な技術を開発しました。この技術は、皮膚に塗布した成分がどのように内部に浸透していくかを生体に近い状態で立体的に観察できるもので、特に注目されています。
従来の方法では、成分の浸透状況をチェックする際に前処理が必要で、皮膚の持つ本来の特性が変わってしまうという課題がありました。しかし、メナードが開発した新しい3次元凍結質量イメージング技術は、凍結した皮膚を極低温下で質量分析することにより、成分の分布をそのまま観察することが可能です。
このイメージング技術のメリットは明瞭です。たとえば、ビタミンCのような成分を皮膚に塗布した場合、その浸透経路や速度をリアルタイムで確認できるため、化粧品や医薬品の効果をより正確に引き出すための貴重なデータを得ることができます。この能力により、製品の開発において、使用者にとって機能的で安全な商品を目指すことが可能になるでしょう。
今回の研究は、「知の拠点あいち重点研究プロジェクトⅣ期」の一環として行われており、名古屋大学の森林化学研究室とあいち産業科学技術総合センターとの連携の成果です。このプロジェクトでは、新しい技術の開発や産業界のニーズに応える研究が積極的に進められています。
技術の詳細
開発されたイメージング技術は、GCIB(ガスクラスターイオンビーム)とTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)を組み合わせた、独自の試験装置を使用しています。具体的には、皮膚に化粧品や外用医薬品を塗布した後、すぐに凍結し、凍結した状態で表面をGCIBで削り、TOF-SIMSで質量測定を行います。これにより、3次元的な質量イメージング像を解析することができるのです。
従来の分析技術では、皮膚の乾燥などの前処理が必須であり、その結果、成分の動きや分布に変化が生じていました。しかし、今回の方法は-140℃の極低温下でそのまま測定を行うことで、皮膚の構造や成分の特性を維持しながら、リアルな浸透状態を観察できるようになりました。
この革新的な技術は、化粧品業界のみならず医療分野でも活用が期待されています。成分の浸透性を評価することで、新薬や治療薬の開発にも大きく寄与する可能性があります。
今後、日本メナード化粧品はこの新技術をもとに、さらなる研究開発を推進し、より効果的で安全な商品開発に取り組んでいく考えを示しています。消費者にとっても、この新技術がもたらす透明性と信頼性に期待が高まります。日々進化する化粧品業界において、メナードの取り組みは確実に一歩先を行っていると言えるでしょう。