芝浦工業大学とサイバネット、紫外線硬化接着剤の新技術を共同開発

紫外線硬化接着剤の硬化過程を予測する新技術の誕生

芝浦工業大学とサイバネットシステム株式会社が共同で開発した新たな技術が、精密機器における紫外線硬化接着剤（UV接着剤）の硬化過程の予測を可能にします。この技術の名称は「硬化収縮応力シミュレーション技術」といい、UV接着剤の特性を解析するためのものです。両者の研究成果は、スマートプロセス学会のエレクトロニクス生産科学部会によるMate2025優秀論文賞を受賞しました。

背景と課題

紫外線硬化接着剤は、特にスマートフォンやカメラレンズなどの精密部品の接着において重要な役割を果たしています。しかし、接着剤が硬化する際の収縮による部品の位置ずれや変形は、製品の性能に影響を与える可能性があります。このため、UV接着剤の硬化過程を予測できる技術が必要とされていました。そこで開発されたのが今回のシミュレーション技術です。

開発内容

「硬化収縮応力シミュレーション技術」は、有限要素法（FEM）を利用しており、接着剤の硬化反応による特性の変化を計算することで、UV照射下での接着剤の挙動を予測します。この技術はAnsysソフトウェアを基にしたもので、連続的な粘弾性特性の変化を考慮することが可能です。

実際の実験では、UV硬化樹脂が液体からゲル、そして固体に遷移する過程の材料挙動を把握し、レンズを接着する際のUV照度や接着剤の硬化挙動がレンズの変位や応力に与える影響を確認しました。これにより、接着プロセスにおける成形不良を防ぐための重要な要素が明らかになりました。

研究成果とその評価

今回の技術は、芝浦工業大学の工学部教授・苅谷義治氏と大学院生・小栗巧氏による研究に基づいています。サイバネットは、Ansysソフトウェアのユーザーサブルーチンを用いて技術協力を行いました。両者の共同研究成果は、「硬化収縮応力シミュレーションを用いた紫外線硬化接着剤の硬化中の緩和挙動予測」という論文としてまとめられ、Mate2025優秀論文賞の受賞に至りました。

今後の展望

芝浦工業大学の苅谷教授は、この研究が精密機器の設計開発プロセスに新たな視点をもたらし、品質向上や手戻り削減に寄与することを期待しています。今後は、硬化応力計算だけでなく、使用環境での破壊予測まで対応できるよう、シミュレーション技術のさらなる発展を目指します。

一方、サイバネットの松本真周取締役は、持続可能な社会に向けたシミュレーション技術の活用を重視しており、紫外線硬化樹脂に関する新たな解析技術の開発に引き続き力を注ぐ意向を示しています。