世界で活躍する中里唯馬氏による特別講義
東京、大阪、名古屋、パリ、ニューヨークにキャンパスを展開するモード学園は、ファッション・デザイン・ビジネス、インテリア、グラフィック、美容業界と多岐にわたるプロを育成することに注力しています。今回、その中で特別に招かれたのが、中里唯馬氏です。彼は、日本で唯一、パリのオートクチュールウィークの公式ゲストデザイナーとして選出され、10年にわたりコレクションを発表し続けているデザイナーです。
講義では、中里氏の活動の振り返りと共に、創造を続けるための思考法、インスピレーションを遡る重要性、ファッションの社会的な力について多くの実例を交えながらお話されました。
「楽しい」が続く理由
中里氏は、「デザイナーとして活躍し続けている理由は、どこかで“楽しい”から」と語ります。制作において困難に直面しても、その楽しさが勝っていれば前に進めるという考え方を持っています。彼は学生たちへ、ファッションの中で自分がどのように楽しさを感じているのか、ぜひ言葉にしてみてほしいと伝え、同じ「ファッション」の好きも、それらの入る入り口が個々に異なること、これが自分自身の個性を知る第一歩だと示唆しました。
インスピレーションの重要性
講義の中で、中里氏はインスピレーションは待っていて来るものではなく、「育てる」ことが重要だと語ります。日常や旅の中での「心の抑揺」、つまり喜びや恐怖、不安といった感情に意識的に目を向けることが大切だと述べました。彼は以下の方法でインスピレーションを得るよう指導しました:
- - カメラで心が動いた瞬間を捉える
- - その理由を言葉にして記録する
- - 写真を印刷し、可視化することで思考を整理する
こうしたアプローチを通じて、自分独自の視点を明確化し、デザインに結びつけていく方法を学ぶことができます。さらに、中里氏は砂漠での遭難経験や染料を使った服作り、現代芸術を融合させた作品を紹介し、個々の体験や感情がデザインに独自性を与えるプロセスについて話しました。
スランプの正体
「アイデアが浮かばないことがスランプだと思われがちですが、実は“信じることができずに手放してしまう状態”こそがスランプです」と中里氏は語ります。直感を信じて育て続けることが大切だと、人工タンパク質を使用した素材開発や古着再生プロジェクトを例に挙げ、試行錯誤の大切さについて強調しました。失败の中から直感を信じ続けることで、唯一無二の表現に到達するのです。
ファッションの力
中里氏はまた、ファッションが社会や情勢の変化を反映する手段であると説明しました。彼の「繊細な鎧」という作品例を通じ、言葉にすることが困難な問題をファッションを通じて表現することで、考える余地を与えられます。このようなアーティスティック・ジャーナリズムの視点は、これからのクリエイターにとって重要な知識となるでしょう。
服がもたらす影響
講義の終わりには、ケニアの施設でのエピソードが紹介されました。中里氏の作品を着た少女が自然に振る舞い、その場の空気が一瞬にして変わった瞬間を彼は強く感じました。服が人の心に影響を与え、自信を育むきっかけになるというメッセージを学生たちに伝えました。
学生へのエール
最後に、中里氏からの学生への励ましとして、以下の三つのポイントを提案しました。
1. 過去の成功例に縛られすぎないこと
2. 自らのスタイルや社会との接し方を考えること
3. 小さな形であっても早めに発表し、フィードバックを得ること
中里唯馬氏の講義は、学生たちにとって自らの道を拓くための貴重な機会となり、創造性を刺激する素晴らしい時間でした。