中小企業の人的資本経営の現状と課題
2025年度に実施された「中小企業経営実態調査」の結果が発表され、中小企業の人的資本経営に関する認知度や取り組み状況が明らかになりました。この調査は、フォーバル GDXリサーチ研究所によって行われ、932名の中小企業経営者の意見を基にしたものです。調査結果によると、人的資本経営について「知らない」という企業がなんと60%を超え、また「取り組めていない」とする企業も同様に60%以上という、深刻な状況が浮き彫りになっています。
人的資本経営とは?
人的資本経営は、従業員の能力や知識を単なる経費として捉えるのではなく、企業にとっての重要な「資本」として認識し、その価値を最大化することを目指す経営手法です。この概念が注目される背景には、持続的な企業の成長を実現するためには、人的資本が欠かせない要素であるという理解が広がってきたことがあります。人的資本経営を推進するためには、従業員を大事にし、企業内外のステークホルダーへの配慮も重要とされます。
調査結果の概要
調査結果を見てみると、人的資本経営に関する取り組みが行われていない理由として、「時間がかかる」という回答が半数を占め、さらに「費用」、「人材不足」などの社内リソース不足が顕著に感じられました。もちろん、約8割の企業が人的資本経営に取り組むことが業績に好影響を及ぼすと予想している一方で、実際にはその理解と実践が乖離していることが明らかになりました。
認知度と実施状況
人的資本経営の認知度を問う設問では、「聞いたことはあるが、よく知らない」という回答が30.9%、「知らない」との回答が31.7%の割合であり、合計して約6割がこの概念を十分には理解していないことが示されています。他方で、他の人に説明できるほどの理解があると答えたのはわずか8%に過ぎません。
また、実際に人的資本経営に取り組んでいる企業は少なく、「あまり取り組めていない」と「全く取り組めていない」を合わせると78.8%となり、目を引く現実が浮き上がってきました。
課題と解決策
経営者が感じる課題として、まず「時間がかかる」という点が挙げられました。この課題に対しては、外部の専門知識と支援制度の導入が解決への一助になると考えられます。また「費用がかかる」という声も多く、中小企業の限られたリソースの中で、どのように人的資本を最大化していくかが焦点となります。
人的資本経営を行いたい理由としては、従業員のエンゲージメント向上(61.7%)、優秀な人材の採用・定着強化(61.7%)が多く挙げられ、また業績に与える影響についても8割近くの経営者が「影響がある」と回答しています。
期待される変化
今後、時間、費用、人材といった課題を軽減し、外部知見や支援制度が整備されることで、人的資本経営への取り組みが円滑に進むことが期待されます。人的資本の価値を最大化することは、企業の成長だけでなく、社会全体の健全な成長を促す源泉になるでしょう。
フォーバル GDXリサーチ研究所の役割
このような状況を受けて、フォーバル GDXリサーチ研究所は中小企業の人的資本経営を推進するための調査や情報提供を行う研究機関として、今後も積極的に活動を続けていきます。中小企業の持続可能な成長を支えるための施策を提案し、それに基づく支援をしていくことが求められています。社会全体が育てる中小企業の力量を引き出すために、我々も精一杯貢献していきたいと考えています。