はじめに
自治体における職員のエンゲージメントと退職率の関係性について、株式会社リンクアンドモチベーションが実施した調査の結果について詳しく見ていきたいと思います。近年、日本の地方自治体は職員の人材確保に難しさを感じており、この問題は多くの自治体が直面している共通の課題です。特に、総務省の調査によれば、地方公務員の受験者数はここ10年で約28%も減少しており、地方公務員の退職者数は顕著に増加しています。特に40歳以下の若手職員においてその傾向が顕著であり、これを解決するためにエンゲージメントの向上が如何に重要かが問われています。
調査背景
この背景を受けて、総務省は「地方公共団体における人材マネジメント推進のためのガイドブック」を公表し、職員のエンゲージメントを高めることが人材マネジメントの重要な要素として位置づけられています。エンゲージメントが職員の組織や仕事への貢献意欲を示すものであり、実際の退職率に与える影響を検証するため、我々は具体的な調査を行いました。
調査概要
調査は令和6年度の上半期に行われ、日本中の5つの自治体に所属する4,814名の職員を対象としました。調査には、エンゲージメントスコアを5点刻みで分類し、それに基づいて退職率を算出しました。この数値を、退職者数を在籍人数で割ることで算出し、エンゲージメントスコアの高低による退職率の傾向を明らかにしました。
調査結果
調査結果からは明確な傾向が示されました。エンゲージメントスコアが高い組織ほど、退職率は低くなる傾向にあることが確認されたのです。具体的には、エンゲージメントスコアが40未満のグループでは退職率が4%を超えたのに対し、スコアが55以上の高エンゲージメント組織群では退職率が2%を下回る結果となりました。これはエンゲージメント向上が人材の定着に寄与することを示唆しています。
意義と今後の方針
今回の調査結果は、自治体におけるエンゲージメントの重要性を実証的に示すものとなりました。特に職員がいかに組織にエンゲージされているかが、退職しない意欲に直結しているという結果を見たことで、エンゲージメント向上の取り組みがいかに必要かを再認識させられる結果です。
従来より、エンゲージメントの重要性は指摘されており、その改善に向けた取り組みが求められていますが、思うように効果が見られない自治体もあります。当社では、エンゲージメントサーベイを活用し、その結果をもとに具体的な改善策を進める支援を行っています。実際に、エンゲージメント調査を何度も実施している自治体では、初回のスコアが43.9から最新の調査では50.5にまで上昇しており、退職者数の減少も実現されています。
結論
この調査から得られた知見をもとに、今後も持続可能なエンゲージメント向上に向けた取り組みを進めて行く必要があります。リンクアンドモチベーションとしては、今後も実効性のある支援を続け、職員が自らの仕事と組織に対する誇りを持てるよう、サポートを続けていく所存です。これにより、自治体の健全な運営と職員の働きやすい職場作りへ貢献していければと考えています。