時代の変化と東京オフィス市場
最近、東京のオフィス市場は需要が拡大し続けていますが、その背景には競争激化の要因があると考えられます。特に、2023年7月時点では東京23区内の大規模ビルの空室率が5.35%に達しましたが、翌年の2024年12月には3.79%まで低下しました。こうした数字の背景には、優秀な人材の採用難が一因として挙げられます。
高まる「出社したくなるオフィス」需要
企業は、従業員の満足度を向上させるために、「出社したくなるオフィス」を追求するようになりました。それに伴い、質の高いオフィスビルへの需要が集中し、オフィス市場は二極化が進行しています。本レポートでは、2024年3月に発表された交通利便性別の空室率データをもとに、最新の市場動向を分析します。
空室率に見る交通利便性の影響
図表1では、東京23区内の築1年以上の大規模ビルについて、周辺鉄道路線数による空室率の変化を示しています。交通利便性が低いオフィスビルは、コロナ禍以降、空室率が上昇傾向にあり、2024年7月には8.79%まで達しました。この原因は、交通利便性の低い環境で竣工したオフィスビルの多くが空室を抱えていたからです。
一方で、交通の便が良いビルでは空室率が低下を続け、なんと2024年12月には1.57%にまで下がりました。この高低さは、1路線のみのビルとの空室率の差は5.98ポイントに達しており、交通利便性の重要性が窺えます。
募集賃料にも現れる格差
次に、図表2において、交通利便性の違いによる募集賃料の推移が確認できます。コロナ前の2019年には募集賃料の格差が16.20%でしたが、2022年8月には9.42%まで縮小しました。その後、優良オフィスビルへの移転が進み、2024年には募集賃料の格差が14.70%と再び広がりました。
高交通利便性の立地では、募集賃料の上昇傾向がより強いことがわかります。また、近年では築年数の浅いビルでも一定の人気を集めており、そうした物件は着実に空室を埋めています。
人材採用の観点からの交通利便性
求職者にとって通勤のしやすさは非常に重要な要素です。そのため、高い交通利便性を持つオフィスビルは、多くの優れた人材を惹きつけることが期待されます。少子高齢化の進展もあり、今後のオフィス需要はますます交通利便性にシフトしていくことでしょう。
最後に、このデータは筑波大学と三幸エステート株式会社の共同研究の成果であり、今後の市場動向を見据えたものとなっています。採用難を克服するための戦略として、高い交通利便性を持つオフィスビルの需要が高まることが予想されます。
付録:鉄道路線へのアクセス性
鉄道路線へのアクセス性は、オフィスビルの周辺500m以内に存在する鉄道路線の本数を示します。これによって、交通利便性の高低を具体的に把握することが可能です。たとえば、銀座四丁目のビルAは、周辺に多くの鉄道路線が存在し、高いアクセス性を誇っています。このように、立地選びはオフィス市場にとって重要な要素であり、多くの企業が注目しています。