南相馬市、AIと衛星データを活用した農地維持支援を開始
福島県南相馬市に本社を置くLAND INSIGHT株式会社が、同市および全国で進行中の「中山間地域等直接支払制度」を支援するため、新たな実証事業に着手しました。このプロジェクトは、農地維持の支援を目的としています。共同のパートナーとして、Penguin Labs合同会社が参加し、AIや衛星データを活用した革新的な手法で実施されます。
農地維持を支える背景
中山間地域等直接支払制度は、平地に比べて生産条件が厳しい中山間地域の農業を維持するために設けられた国の制度です。2024年度には531億円もの交付金が予定されていますが、実際には制度の対象となる農地の実施率は低く、農林水産省の推計によれば、急傾斜農地では約54%、緩傾斜農地では約31%と、全体の36%にとどまります。これにより、6割以上の農地が支援を受けていない現状があります。
この背景には、農業の担い手不足や高齢化、制度への認知不足、申請手続きの負担が存在します。これらの課題を受けて、農林水産省は2026年から「プッシュ型支援」へと制度を変更し、地方自治体が農地の特定と活用を促進する方向への転換を打ち出しています。
実証事業の内容と仕組み
南相馬市での実証事業は、旧石神村・旧上真野村エリアにある約12,000筆の農地を対象に行われます。ここでは、衛星データや地形データをAIで分析し、対象候補農地を抽出するシステムの構築を目指します。
1. 交付対象農地の可視化
国土地理院が提供する標高データや衛星データを駆使し、交付の要件を満たす可能性のある農地を一筆単位で抽出します。分析の結果は視覚的に提供され、傾斜や農地のまとまりを色分けした状態で確認することができます。
2. 制度の活用状況の把握
抽出した交付対象農地と実際の交付状況を比較し、制度が活用されていない地域を特定します。これにより、南相馬市が優先的に支援を行なうべき集落を明示し、行政側の働きかけを強化します。
3. 交付見込額の試算
対象農地について、年間の交付見込額を算出し、これを集落や農家への説明に役立てます。
4. 業務の効率化
抽出した情報は申請業務にも利用できるよう整備し、AI技術を活用して業務の効率を高めることを狙っています。
実施体制
本事業は南相馬市、Penguin Labs、LAND INSIGHTが一体となって実施します。
- - 南相馬市:実証フィールドの提供及び集落への働きかけ
- - Penguin Labs:衛星・地形データの解析および対象農地可視化システムの開発
- - LAND INSIGHT:地方自治体や農家のヒアリング調査を通じた現場課題の整理
未来に向けた展望
今回の実証事業の成功を受け、LAND INSIGHTとPenguin Labsは全国の中山間地域への導入を目指します。また、現場でのデジタル化を進めることで、中山間地域の農地維持と制度活用の促進に貢献することが期待されています。地理空間インテリジェンス技術を活用した新たなサービスの拡大にも期待がかかる状況です。
今後、南相馬市から始まるこのプロジェクトが中山間地域の農業を支える大きな力となることを願っています。