大阪の革鞄職人が見つけた新たな挑戦
大阪市東成区の「かばん屋今村」は、1947年から続く歴史あるレディースバッグメーカーです。三代目の今村幸平氏が独自のブランド「tumugi(つむぎ)」を立ち上げ、今までの鞄製作とは一線を画す新たな挑戦を始めました。ランドセルを再利用し、お母さんのためのオーダーリメイクバッグを生み出すこのブランドは、子供の成長と母親の日常を“編む”というコンセプトを持っています。
若き三代目の継承
今村氏は、21歳で父の急逝により家業を継ぎました。当初は、従来の営業スタイルに依存していたため、急激な売上の減少に見舞われました。それまで外注職人に依存していた経営が厳しくなり、彼は技術を磨くために海外へ渡る決意をしました。
海外修行と技術の向上
技術向上のため、イタリアやフランスに何度も行き、現地の職人から学びました。特にエルメスの美しさと職人技術に感銘を受け、古いエルメス鞄を研究のために解体しました。このようにして職人技を学び、その知識を生かして市場に適した商品を開発する努力を続けました。
20年間の葛藤
その後、着物の裏地で作った鞄が販売会社の目に留まり、セミオーダー形式で販売される機会が生まれました。しかし、直接顧客と接する機会が少なかったため、オーダーメイドの魅力を伝えられないもどかしさを抱えていました。そんなある日、友人の奥様から「子供のランドセルで何か作ってほしい」との依頼が入り、「tumugi」の成り立ちにつながります。
ランドセルの再生
「ランドセルは硬く、限られた面積しか使えないため、リメイク品はペンケースに留まってしまう」との問題を解決するため、今村氏は自身の技法を活用しました。ネットで中古のランドセルを購入し、裁断したパーツをひも状に加工し、牛革と編み込み、より柔らかい素材に生まれ変わらせました。
お母さんの喜び
最初に作ったオーダーリメイクバッグは、友人の奥様に非常に喜ばれました。子供が使っていたランドセルが普段使いできるバッグに変身したことは、思い出と日常の両方を繋ぐ素晴らしい体験となりました。これをきっかけに、職人としての挑戦がさらに広がることになります。
新たな挑戦を目指して
「tumugi」では、全ての工程を職人の手で行い、顧客の大切な思い出を形にするオーダーリメイクバッグを提供します。今後は、ランドセルだけでなく、革ジャンやブランドバッグなども素材にしたリメイクを視野に入れ、より多くの人々の心に寄り添う鞄づくりを目指します。職人の想いと未来を見据えた新たな挑戦、目が離せません。