『翠雨の人』—伊与原新の新しい物語
2025年のApple Booksベストブックスに選ばれた伊与原新氏の最新作『翠雨の人』は、実在の女性科学者、猿橋勝子に焦点を当てた作品です。この本は、科学と社会、そして戦争という難解なテーマを扱い、勝子の情熱的な生涯を描いています。
猿橋勝子の背景
猿橋勝子は、1920年に東京で生まれました。彼女は東京府立第六高等女学校を卒業し、当時日本初の女性のための理系専門学校である帝国女子理学専門学校の第一期生となります。その後、中央気象台で三宅泰雄氏の指導の下で研究を行い、科学の道へと進んでいきました。
戦争と科学の葛藤
勝子は、戦争中に中央気象台で働くかたわら、科学研究が戦争に利用されることに葛藤を抱いていました。彼女の研究は、後のビキニ水爆実験による放射能汚染の実態の解明へとつながり、科学者としての使命感を強く持ち続けました。このような背景が、『翠雨の人』の物語全体に流れるテーマです。
本作の魅力
『翠雨の人』は、少女時代からの勝子の成長を辿りながら、彼女がどのようにして科学者となり、さまざまな壁を乗り越えてきたのかを描いています。なぜ雨が降るのかという単純な疑問を持っていた少女が、科学者として未来を変える使命を持つまでの道のりは、多くの読者にとって共感を呼ぶことでしょう。
科学の意義
本書は、勝子が抱いていた「人類を幸せにする」ための科学への思いを反映しています。彼女はただの研究者ではなく、女性科学者の育成にも尽力し、「猿橋賞」を設立。彼女の影響は、今尚多くの女性研究者たちに受け継がれています。
読者へのメッセージ
この作品は、戦争を経験した人々やその背後にある社会情勢を理解しながら、科学の目的と人間の情熱が交差するところを読み解くことができる一冊です。戦後80年の節目に、今一度彼女の生涯を振り返り、科学の本質について考える良い機会となることでしょう。
書籍情報
「翠雨の人」は、7月30日にハードカバーとして発売され、定価は1,980円(税込)。詳しくは
こちらで確認できます。
伊与原新氏の作品は、今後も多くの読者に感動を与えること間違いありません。ぜひ手に取ってみてください。