地域循環型社会の実現を目指す新データセンターモデル
株式会社NTTファシリティーズが発表した新しいデータセンターモデルは、地域循環型社会に貢献しつつ、高効率な運用を目指しています。このモデルは、急速に進化する生成AIの需要に応えるため、データセンターの立地が東京や大阪に集中する問題を解決し、地方分散の推進を目的とするものです。
データセンターにおける現在の課題
最近の技術進化により、データセンターの必要性が増す一方で、東京・大阪近郊では用地確保や電力供給の問題が顕在化しています。そのため、政府も地方分散を推奨しており、電力利用効率(PUE)の規制も厳しくなっています。これらの課題に対し、NTTファシリティーズは「地方共生型高効率データセンターモデル」を開発し、地域と共存するデータセンターの在り方を示しています。
地域と共生するデータセンター
このモデルでは、サーバーから出る廃熱を地域内の住宅やビニールハウス、温浴施設などに供給する仕組みを採用しています。具体的には、IT容量36MW規模のデータセンターは、約2,300戸の戸建住宅や70,000㎡のオフィスビルにエネルギーを供給する能力があります。また、廃熱を利用したサウナ施設も設置し、見学者にデータセンターが地域に貢献する様子を示すことを計画しています。
防災機能の強化
このデータセンターは単に地域に寄与するだけでなく、災害時の電力供給機能も果たします。非常用発電機やUPSを備え、周辺の再生可能エネルギー発電所と連携することで、地域防災拠点としての役割を担います。これにより、地域の安全を確保し、持続可能なインフラの構築が期待されます。
研究・開発の拠点としての役割
さらに、このデータセンターは地域の大学や企業との共同研究を進めるための共創施設を併設予定です。資金面や運用コストのハードルが高く、地方での研究・開発拠点の設置が難しいという課題を解決することを目指しています。
省エネ冷却モデルの実現
本モデルでは、省エネを実現するために、自然通風を効かせた冷却塔システムを導入しています。このシステムにより、廃熱を冷却するためのエネルギー消費を抑え、さらに外気を利用した直接蒸発式外気冷房(DEC)を採用することで、約70%の省エネルギーが期待できます。これらの取り組みにより、PUEは業界最優先の1.14を実現します。
今後の展望
今後、NTTファシリティーズはこのデータセンターモデルを一つの参考に、地域共生型データセンターの実現に向けた取り組みを進めていく予定です。また、再生可能エネルギーを取り入れたデジタルインフラの構築を目指し、持続可能な未来に貢献することを目指しています。
この新たなデータセンターモデルが、地域循環社会の実現とデータセンターの省エネルギー化という二つの課題を同時に解決し、未来のICTサービスへ向けた確かな一歩となるでしょう。