慶應義塾大学が画期的なNK細胞リンパ腫マウスモデルを開発
慶應義塾大学の研究チームが、世界初となるNK細胞リンパ腫の自然発症マウスモデルを開発しました。このモデルは、アジアに多く見られる難治性疾患である鼻型NK/T細胞リンパ腫(ENKTCL)に似た免疫環境を再現。研究の成果は、将来的な新規治療法の開発に向けた大きな一歩となります。
NK細胞の重要性と新モデルの特長
本研究では、特にNK細胞に着目し、がん抑制遺伝子であるTrp53をNK細胞に特異的に欠失させる手法を用いて、唾液腺などに腫瘍を形成するマウスモデルを開発しました。このマウスは、間違いなくNK細胞に由来するリンパ腫を自然に発症するという特異性を持っています。さらに、腫瘍が形成される過程で、未熟なNK細胞が増加し、これが本腫瘍の起源である可能性を示唆しています。
EBウイルスとの関連性の解明
また、この研究では、EBウイルス由来のタンパク質LMP1が腫瘍免疫微小環境を変化させる影響も明らかになりました。樹状細胞の増殖を促進し、これが腫瘍の発症を加速することが判明しています。これまで知られていなかったEBウイルスの寄与が解明されることで、治療の新しいアプローチが期待されます。
新たな治療法の可能性
さらに、NK細胞リンパ腫において特異的に発現するKLRG1というタンパク質に注目が集まっています。このタンパク質は、ヒトのENKTCL細胞でも確認されており、KLRG1を標的とした治療法が生存率向上につながる可能性が示されています。
まとめ
今回の研究により、NK細胞リンパ腫の新たなマウスモデルが登場したことで、その発症メカニズムの解明と治療法開発に向けた重要な知見が得られました。この研究成果は、今後の医療において大きな影響を与えるものと期待されています。研究の成果は、2024年10月22日に英科学誌「Nature Communications」に掲載され、多くの関心を集めています。
詳しい情報は、慶應義塾大学のプレスリリースをご参照ください。