生成AIと産業用ロボットの融合が切り拓く未来の労働現場
近年、産業用ロボットの分野では、生成AIを活用した新たな動作指示システムの開発が進められています。特に株式会社チトセロボティクスは、その設計思想を「目的特化かつ最小限のAI利用」に置き、産業現場におけるロボット導入の実用化に向けた重要な成果を上げました。この成果は、2025年9月に開催される第43回日本ロボット学会学術講演会で発表される予定です。
研究の背景と開発動機
チトセロボティクスは、これまでにも「日本語と画像による自然言語動作指示システム」の研究を行なってきました。このシステムでは、プログラミングの必要がなく、多くの期待が寄せられましたが、同時に完全なAI依存に対する信頼性や導入のハードルが課題として浮上しました。
この点を踏まえて、同社は必要最小限のAI活用にとどめ、使用場面に応じて機能を適切に分担する新たなアプローチを検討しました。
研究の革新ポイント
研究では、システム設計を「作業認識」「身体認識」「環境認識」の三要素に分割し、各要素に目的特化型の生成AIを適用する手法を開発しました。この手法により、産業現場で求められる高い性能と迅速な応答を両立させることが可能になりました。
実証実験では、10種類以上の作業を対象にした「ピックアンドプレイス」動作生成実験が行われ、精度と速度の両方で実用水準を達成したことが確認されました。また、AIモデルのアップデート(ChatGPT-4からChatGPT-5へ)によって、処理速度や安定性が一層向上する傾向も見られました。
学会発表概要
この成果は第43回日本ロボット学会学術講演会で発表されます。一般講演は2025年9月5日の14:15から、東京科学大学で行われ、発表者は西田亮介社長です。また、9月4日にはランチョンセミナーで「労働力不足問題解決のための取り組み」をテーマに講演が行われる予定です。
今後の展望
チトセロボティクスは、今後も「目的特化かつ最小限のAI利用」という理念を基に、産業用ロボットの導入を促進し、高度な動作対応や応用の拡大に取り組んでいく意向を示しています。ロボット技術の進化は、未来の労働現場に新たな可能性を与えることでしょう。
ロボット制御ソフトウェア「クルーボ」
さらに、同社が開発したロボット統合制御ソフトウェア「クルーボ」は、カメラ映像を活用したビジュアルフィードバック制御を通じ、±0.02mmの精密制御を実現させています。これは、様々なメーカーのロボットに対応可能で、低コストながら柔軟な生産ラインを構築するための強力なツールです。
このように、チトセロボティクスは、ロボット技術が人々とどう協働し、生産性と働きがいの向上に寄与できるかを考え、持続可能で豊かな社会の実現に向けた取り組みを続けています。
会社概要
株式会社チトセロボティクスは、東京都文京区に本社を置く企業で、ロボット制御ソフトウェアの開発やロボットシステムの研究を行なっています。利便性と効率性を兼ね備えたロボットの未来を切り拓くため、人とロボットが自然に協働する未来の働き方を目指しています。