歴史的建造物の再生を目指す新たな挑戦、那智勝浦の「那智ファンド」
和歌山県の那智勝浦町で、株式会社Planet Labsが新たな無住職寺院再生プロジェクト「那智ファンド」を立ち上げることを発表しました。このプロジェクトは、地域に根差した歴史的建造物への小口投資を促進する「PlanetDAO」の一環として、沿道に位置する貴重な文化財「寳光寺」(ほうこうじ)を宿泊・体験の拠点として再生することを目的としています。
世界遺産・熊野古道の保全と地域観光の発展
熊野古道は、千年以上も人々が祈りを捧げてきた歴史ある道であり、日本有数の精神文化の象徴として世界遺産に登録されています。しかし、近年多くの寺院が住職を失い、無住職状態となっているため、維持や修繕が困難な状況が続いています。その結果、約3割のお寺が檀家を失っているという深刻な現状があります。
今回のプロジェクトは、寳光寺をはじめとする無住職寺院の維持管理を助け、文化財を守りながら観光資源としての再生を図ることで、地域の活性化を目指しています。本プロジェクトによって、熊野古道の魅力を広げると同時に、地域社会との共同作業としての投資モデルを具現化しています。
小口投資で文化財保全への新たなアプローチ
「那智ファンド」の最大の特徴は、国内外からの小口投資を集めることで、寺院や古民家に対する資金調達を行う点です。これまでのプロジェクトでは、既に多くの出資者を集め、着実に資金を調達しています。そこで得た資金を使って、無住職寺院の整備や活用を進めることで、地域の文化財の持続的な保全と活用を支援しています。
また、宿泊施設としての寳光寺の再生は、国内外の旅行者にとっても魅力的な選択肢となるでしょう。特に、熊野古道の周辺には訪れる観光客が増えており、その稼働率は70%に達するなど、宿泊需要にしっかりと応えられる体制を構築しています。今回の取り組みは、地域観光の発展にも寄与することでしょう。
寳光寺の持つ歴史的価値
寳光寺は、江戸時代に設立され、地域住民の信仰を支えてきた歴史的な寺院です。200年以上の歴史を持ち、当時の職人の技が随所に見られる貴重な建造物です。清流に囲まれたこの地域は、歴史と文化を受け継ぐ場所としても価値があります。しかし、少子高齢化や都市への人口流出などにより、その維持管理は難しくなっています。
このプロジェクトは、そのような伝統文化を未来へと紡いでいくための新たな試みであり、地域住民や出資者が協力し合い、文化財の保全と地域活性化を同時に達成する狙いがあります。
PlanetDAOの取り組みがもたらす未来
PlanetDAOは、地域と投資家が協力して持続可能な文化財保全モデルを構築することを目指しています。多様なステークホルダーが集まり、柔軟な議決権の設計により地域の価値観を尊重しつつ、運営の自由度を高めています。今後、このようなモデルが他の地域にも広がり、無住職寺院の再生が進むことを期待しています。
私たちが大切にするべき文化財を地域とともに盛り上げ、未来へと引き継いでいくためのこのプロジェクトに、ぜひ注目してみてください。地域資源を生かした新しい形の観光地が、再び息を吹き返す瞬間となるのです。