チーズ摂取と認知症発症リスクについての新たな研究
近年、食生活と認知症の関係についての研究が進んでいますが、最近の追跡調査の結果、特にチーズの摂取が認知症の発症リスクを低下させる可能性が示されました。この研究は、日本の高齢者を対象に行われたもので、株式会社明治と公立大学法人新見公立大学が共同で実施されたものです。
研究の背景
この研究は、日本老年学的評価研究(JAGES)を基にしたもので、全国の多くの自治体から高齢者の健康に関するデータを収集しました。特に、チーズの摂取習慣と認知症の発症に関する相関関係を調査した点が注目されます。
過去の研究でも、乳製品が認知機能に与える影響は報告されていますが、その多くは欧米を対象としたものであり、日本の食習慣を反映した研究は少なかったため、今回のこの研究には大きな意義があります。
研究の方法
対象者は、2019年に郵送アンケートに回答した65歳以上の高齢者26,408名のうち、2022年の長期介護保険認定データに基づいて選抜された13,759名。最終的に、除外条件を満たさない10,180名を分析対象とし、チーズを日常的に摂取している群と摂取していない群それぞれで認知症の発症に関するデータを比較しました。
調査はコックス比例ハザードモデルを用いて行われ、チーズの摂取頻度が認知症リスクに与える影響が分析されました。
研究の結果
3年後の追跡調査の結果、チーズを日常的に摂取している65歳以上の高齢者では、137名(3.39%)が認知症を発症したのに対し、非摂取者では176名(4.45%)が発症。この結果から、チーズ摂取者の認知症累積発症率は有意に低いことが示されました。
特に、チーズを常に摂取していることで、認知症発症リスクが0.76倍に低下したという結果が得られました。これは、肉や魚の摂取量、さらに野菜や果物の影響を調整した後も同様の結果でした。
結論と今後の展望
これらの結果は、チーズ摂取が認知症リスクに対して有意な影響を持つことを示しています。超高齢社会に突入している日本において、健康寿命を延ばすための一つの手段として、食生活の改善が重要であることが分かります。
さらに、今後はチーズの種類や栄養成分に関する研究を進め、どのような食品が認知機能の維持に最も効果的であるかを解明することが期待されます。この研究は、単に個々の食品の効果を評価するだけでなく、健康づくりの一環として実践できる知見を提供するものです。
今後の研究により、より多くの高齢者が、チーズ摂取を通じて健康的な老人生活を実現できることを期待しています。また、今回の研究成果は、国際科学雑誌『Nutrients』に2025年10月25日に掲載される予定です。国際的にも評価される研究結果が、今後の食生活への影響を与えることに期待が寄せられています。