日本映画界初の女性監督を描いた舞台公演
劇団印象が贈る新作
2025年2月8日から2月11日、東京都武蔵野市にある吉祥寺シアターで、劇団印象-indian elephant-による第32回公演『女性映画監督第一号』が上演される。この作品は、日本映画界初の女性監督、坂根田鶴子の波乱万丈の人生を描いたものである。彼女は当時、女性が監督という立場に立つことすら難しい時代に挑んだパイオニアであり、その生涯には多くの苦難が伴った。
坂根田鶴子の歴史
坂根田鶴子は1930年代に映画界に足を踏み入れ、その後すぐに日本の女性映画監督第一号として名を馳せる。巨匠である溝口健二のもとで助監督としての経験を積み、初の作品『初姿(はつすがた)』で監督デビューを果たす。しかし、彼女のキャリアは一筋縄ではいかない。映画製作の現場では男性中心の文化が支配しており、女性監督としての立場は非常に厳しいものだった。
坂根は男装で撮影現場を走り回り、時に周囲からの偏見やいじめに耐えながら、自らの声を見出そうとして闘った。彼女の前半生は、女性としての存在をいかに確立するかという苦闘の日々だった。これらの経験は現在においても共感を呼ぶものであり、現代の“ガラスの天井”問題を考察する上で重要なテーマとなる。
満州での新たな道
坂根は日本国内での映画制作の限界を感じ、満映(満洲映画協会)に移り住む。そこで彼女は多くの文化映画やドキュメンタリー映画を手掛けたが、その作品は後に日本の傀儡国家である満洲のプロパガンダ映画として評価されることになる。特に、坂根が心血を注いで制作した映画『開拓の花嫁』は、彼女の信念と創作に対する情熱が垣間見える作品であり、本作の後半ではその制作過程が描かれる。
作・演出の意図
本作の作・演出を手掛ける鈴木アツトは、坂根田鶴子が描こうとした「自分の映画」に焦点を当て、その創作の苦悩や葛藤を描くことに興味を持った。彼は、過去の「国家と芸術家シリーズ」を経て、今後は女性の視点から社会を見つめる『天井を打ち破ろうとする女シリーズ』を立ち上げることに決め、その第一作が『女性映画監督第一号』である。
公演情報
公演は2025年2月8日(土)から11日(火・祝)まで、全6回以上の上演を予定している。チケットはカンフェティにて販売中で、一般が5,000円、U29割引が3,500円、さらに高校生以下は特定の回で無料鑑賞が可能だ。演出家の鈴木アツトをはじめ、個性豊かなキャストによる力強い演技も注目される。
まとめ
日本映画界で初めて女性監督として活動した坂根田鶴子の物語は、ただの歴史的な出来事に留まらず、今もなお語り継がれるべきテーマを提供している。この舞台公演は、観客にとって深い感慨を呼び起こすことだろう。彼女の生涯を通じて、女性の地位向上と表現の自由を求める闘いを垣間見ることができるはずだ。