高齢者の社会参加を促進するアプリの効果を実証!2ヶ月間の社会参加頻度が約3回増加
千葉大学予防医学センターの河口謙二郎特任助教、中込敦士准教授、近藤克則特任教授らの研究グループは、60歳以上の高齢者を対象に、社会参加を促進するアプリの効果を検証するランダム化比較試験を実施しました。
この試験では、参加者を社会参加を促すアプリの利用群と非利用群にランダムに分け、介入群は12週間アプリを使用しました。その結果、主要評価項目である過去2ヶ月間の社会参加頻度が、アプリ利用群で約3回増加したことが明らかになりました。
高齢者の社会参加の重要性とアプリ活用
高齢者の社会参加は、身体的・精神的健康、認知機能、生活の質の向上に重要な役割を果たします。しかし、加齢に伴い社会的なつながりが失われたり、健康上の問題を抱えることで、社会参加の機会が減ってしまう傾向にあります。
近年では、スマートフォンアプリを活用した健康増進の取り組みが注目されています。総務省の調査によると、日本では70歳以上の高齢者の60%以上がスマートフォンを所有しており、アプリを活用した介入の可能性が高まっています。しかし、高齢者の社会参加を促進するアプリの効果については、これまで十分な科学的検証が行われていませんでした。
研究の概要
今回の研究では、60歳以上の高齢者を対象に、社会参加を促進するアプリの有効性を検証するため、12週間のランダム化比較試験を実施しました。参加者は、アプリ利用群と非利用群にランダムに分けられ、介入群は12週間アプリを使用しました。
アプリ利用群は、歩数データ取得のためにGoogle Fitをインストールし、さらに社会参加促進アプリもインストールしました。一方、アプリ非利用群はGoogle Fitのみをインストールしました。
研究開始時と研究終了時(研究開始85日後)の2回にわたり、アンケート調査の実施と歩数データの取得を行いました。
主要評価項目と副次的評価項目
主要評価項目は以下の2つです。
1. 過去2ヶ月間の社会参加頻度の変化
2. 週間平均歩数の変化
社会参加頻度の変化については、ボランティア、スポーツ、趣味、文化クラブ、サロン、その他の6種類のグループ活動への参加頻度をアンケートで調査し、その合計を算出しました。歩数の変化については、Google Fitで記録された歩数データに基づき、1日あたりの歩数の週平均を計算しました。
副次的評価項目は以下の3つです。
1. 過去2ヶ月間の各活動における社会参加頻度の変化
2. 過去1ヶ月間の週当たりの外出頻度の変化
3. 幸福感、生活満足度、生きがい(0-10で評価、高得点ほど良い)
研究結果
本ランダム化比較試験の結果、アプリ利用群は過去2ヶ月間の社会参加頻度が約3回増加することが明らかになりました。特に、趣味活動と学習・教養活動で有意な増加が認められました。一方、歩数については、群間で有意な差は見られませんでした。
今後の展望
本研究により、社会参加を促進するアプリが高齢者の社会参加、特に趣味や文化的活動への参加を促進する効果があることが示されました。これは、スマートフォンアプリが高齢者の社会参加を促す有効なツールの1つとなる可能性を示唆しています。今後は、アプリの長期的な利用に関する効果の検証が求められます。