米国大学生が豊島で学ぶ「持続可能な未来への道筋」
香川県・豊島で、米国務省研修プログラムに参加する大学生たちが、環境学習を行いました。認定NPO法人瀬戸内オリーブ基金が主催したこのプログラムには、25名の大学生が参加。豊島事件の歴史と、持続可能な社会への取り組みを学ぶ貴重な機会となりました。
豊島のこころ資料館と処分地の見学
学生たちは、産業廃棄物処分地内にある「豊島のこころ資料館」を訪れ、廃棄物対策豊島住民会議のメンバーである安岐正三氏から説明を受けました。資料館では、不法投棄された産業廃棄物の断面標本や住民運動の資料、写真パネルなどが展示されており、当時の状況をリアルに感じることができました。
安岐氏は、産業廃棄物の不法投棄に苦しみ、県や国などを相手に闘い続けた島民たちの運動を振り返り、「豊島事件は循環型社会転換の第一歩になりました。持続可能な社会の実現は簡単ではない。しかし、自分たちにできることを始めなければ世の中は変わりません」と学生たちに語りかけました。
豊島住民との日本語インタビュー
学生たちは、豊島に住む様々な年代・性別の住民8名にグループごとに日本語でインタビューを行いました。豊島事件がきっかけで豊島がどのように変わったのか、現在の暮らしに影響していることはあるのかといった質問から、豊島での生活やインタビュイーの職業や背景に沿った質問まで、幅広い質問を通して住民の方々の生の声を聞き取りました。
豊島事件と今
1980年代から始まった豊島での産業廃棄物の不法投棄は、住民たちの強い抵抗運動によって、2000年に調停が成立し、廃棄物の撤去と無害化が約束されました。2017年には廃棄物約91万トンの完全撤去が完了し、2021年には汚染水が排水基準を満たし、2022年には処分地の整地も完了しました。現在、地下水の環境基準が達成された後、住民に土地が引き渡される予定です。
研修プログラムと瀬戸内オリーブ基金
この環境学習プログラムは、米国務省が2006年から実施している「CLSプログラム」の一環として行われました。このプログラムは、安全保障や経済発展の観点から重要な役割を果たす世界14言語の人材育成を目的としています。日本での受講を希望する学生は例年400~500人おり、面接や書類選考で25人前後が選抜されます。
瀬戸内オリーブ基金は、豊島事件の教訓を伝え、未来をより持続可能な方向に導くために、次の世代に美しいふるさとを引き継ぐ活動に取り組んでいます。豊島事件の教訓を伝える学びの場として豊島を活用してもらおうと、企業や県内外の学校を受け入れ、環境学習や研修の場を提供しています。また、企業の環境研修プログラムやボランティア活動の受け入れも積極的に行っています。近年は、豊島事件を知らない世代の若者に向けYouTube動画の発信や、海外からの見学者にも対応するため英文パンフレットの作成なども進めています。
瀬戸内オリーブ基金への支援
瀬戸内オリーブ基金では、活動を応援する個人・法人サポーター、その他支援を募集中です。ご支援方法は、個人サポーターになる・寄付をする、法人サポーターとして支援する、オリーブ製品を購入する、SNSフォローなど、様々な方法があります。
豊島から学ぶ持続可能な未来
今回の環境学習プログラムは、米国大学生にとって、豊島事件の歴史、住民たちの努力、そして持続可能な社会への取り組みを学ぶ貴重な経験となりました。豊島で得た教訓を胸に、未来をより良いものにしていくための行動を始めていくことでしょう。