水素滞留挙動の解明に向けたHe照射の影響評価
研究背景
次世代のクリーンエネルギーとして核融合発電が注目を集めています。そのためには、次重水素(D)とトリチウム(T)を利用した核融合反応を採用することが不可欠です。核融合炉でのプラズマを高温で維持するためには、耐熱性の高いタングステン(W)が炉壁素材の有力候補となっており、その特性を理解することが求められています。
しかし、プラズマ内で発生する高エネルギーのD・Tに加え、D-T反応によって生成される中性子やHeによる影響も無視できません。本研究チームは、これらの要因が水素同位体の挙動にどのように影響するかを解明することを目指し、国際共同研究を実施しました。
研究の成果
本研究では、タングステンとその合金のW-10%Reが試料として選ばれました。研究所では、適切な条件を再現すべく、イオン照射実験を行い、その後プラズマ照射を実施しました。これにより、DとHeが混合したプラズマ照射環境が構築され、さまざまなHe比率が試料に与える影響を調査しました。
第1の発見は、W試料において、照射欠陥がDの滞留量を大幅に増加させることが確認されたことです。対照的に、W-10%Re合金では、このような照射欠陥の形成が抑制され、D滞留量は大幅に低下しました。これは、W-10%ReがHeの影響を受けにくいことを示しています。
さらに、Heの滞留量は両試料とも照射損傷への依存性が低く、安定なトラップとしてのHeバブルが形成され、Dの滞留に対する影響を与えました。結果として、Heの濃度が高まることでD滞留量が減少し、HeバブルがDの拡散障壁として働く可能性が示唆されました。
今後の展望と波及効果
本研究で得られた結果は、将来的により詳細で信頼性の高い核融合炉材料の開発に大いに貢献するものと期待されています。シミュレーション手法との組み合わせによって、さらなるデータ精度の向上を図ることができるでしょう。
論文情報
今回の研究結果は、国際学術雑誌「Journal of Nuclear Materials」に掲載され、さまざまな科学者の関心を集めています。著者には静岡大学の大矢恭久准教授ほか、多数の研究者が名を連ねています。今回は、彼らの知見が今後の核融合発電の発展に寄与することを期待したいです。