OJTの課題を浮き彫りにする調査結果が示す企業の現状とは
近年、労働市場における人材不足が深刻化する中、企業にとって新入社員の育成がますます重要な課題となっています。特に、On-the-Job Training(OJT)は、業務を通じて社員が必要なスキルを身につけるための重要な手法として、広く利用されています。しかし、その実施状況や効果には多くの課題が存在しています。
調査の背景
アルー株式会社は、OJTの実施状況とそれに伴う課題を明らかにするためのアンケート調査を実施しました。この調査には、417社が回答しており、その結果は企業のOJTに関する現状を知る上で非常に貴重なデータとなっています。OJTが業務に与える影響、及び関連する課題を理解することは、より効果的な育成制度の構築に向けた第一歩です。
OJTの実施状況
調査によると、従業員数が3,000名以上の企業においては、34.6%が「昨年度よりOJTに取り組むことを強化する」と回答しています。また、約40%の企業が「昨年度と同じ取り組みを続ける」としています。これらのデータは、大企業におけるOJTへの注力が強まっていることを示唆しています。
OJTの実施期間と対象
OJTを実施する期間に関し、3,000名以上の企業の60%は3ヶ月以上の期間を設けている一方、3,000名未満の企業では約40%に留まっています。さらに、対象としている社員は新卒入社1年目が78.4%を占め、3年目社員を対象にする企業は25.9%と、依然新入社員への教育が重視されている様子が伺えます。中途採用者へのOJTも43.8%の企業が実施しており、幅広い採用層への対応が進んでいるようです。
課題感の認識
ここで注目すべきは、どの規模の企業においても54.4%がOJT教育に課題があると感じていることです。特に従業員数10,000名以上の企業では76.9%が課題感を持っており、この規模の企業においても実施の難しさが浮き彫りとなっています。
最も多くの企業が直面している課題は、「OJTトレーナーの指導がばらついている」ことです。実際、約半数の企業がこの点を挙げています。OJTトレーナー自身の業務過多や、新入社員の成長にばらつきが生じることも、相次いで問題視されています。
OJTトレーナーへの支援
興味深いことに、81.3%の企業がOJTトレーナー向けの研修や支援を実施しています。特に、OJT開始前の研修やOJT中のフォローについては、約40%の企業が取り組んでいることがわかりました。
改善策の導入
調査において最も多くの企業が今後取り組むと回答したのは、「職場全体で育成文化を作る」ことです。これは、従業員全体で育成に向けた意識を共有し、協力し合うことでより良い人材育成を図る施策です。これに対して、OJT制度自体の廃止を考えている企業はわずか3.7%に留まっています。
まとめ
今回の調査結果から、OJTが今後も重要な教育手法として位置づけられる一方、様々な課題が明らかになりました。企業が直面しているこれらの課題を解決するためには、OJTトレーナーの能力向上や制度の改善が欠かせないでしょう。これからも、企業がOJTを効果的に活用し、次世代の人材を育成していくためには、これらの課題解決に向けた取り組みが必要です。