紀伊國屋書店出版部が創設70周年を迎える
株式会社紀伊國屋書店の出版部が、今年の11月に創立70周年を迎えることになります。1927年に創業された紀伊國屋書店は、戦前から「文藝都市」や「行動」といった独自の雑誌や単行本を刊行しており、長い歴史を持つ出版社です。現在の出版部が設立されたのは1955年で、その目的は良質な書籍出版を通じて出版文化の担い手となることでした。
出版部が本格的な活動を開始したのは、テンジン著の『ヒマラヤの男』を皮切りに、以降、多くの著者とともに人文科学や自然科学など多分野にわたる書籍を刊行してきました。紀伊國屋書店の出版物は、常に時代を超えて読み継がれるものを目指しており、特に注目すべきはフロムの『愛するということ』や、ドーキンスの『利己的な遺伝子』、ロールズの『正義論』といった作品です。これらは今でも多くの読者によって愛され続けています。
注目の現代作品
近年の出版部の活動は、著者の発掘と質の高いコンテンツ創出に力を入れています。村中直人の『〈叱る依存〉がとまらない』や、五十嵐大の『「コーダ」のぼくが見る世界』など、若手研究者や作家が執筆した書籍は特に話題を呼んでいます。これらの作品は単に読むだけでなく、広く社会の問題に対する意識を高めるものとして評価されており、文学賞や読書感想文コンテストの課題図書としても選ばれています。
また、学習院創立150周年記念の一環として復刊された徳仁親王の『テムズとともに』は、大きな反響を呼びました。さらに、紀伊國屋数学叢書(全33巻+特別版)は、2022年に日本数学会出版賞を受賞し、その質の高さが証明されています。
これからの展望
このように、紀伊國屋書店出版部は過去の振り返りだけでなく、未来に目を向けて邁進しています。「書物の力を信じる」という信念の下、読者の知的好奇心を掻き立てる書籍の創出に取り組んでいく所存です。今秋から来春にかけて、全国の紀伊國屋書店と提携書店において「紀伊國屋書店出版部70周年記念フェア」を開催します。これを機に、ぜひ皆様にも足を運んでいただき、公私ともに素晴らしい作品との出会いを楽しんでいただければと思います。
紀伊國屋書店の70年の歴史は、ひとえに多くの読者や著者、そして社員たちの努力によって築かれてきたものです。今後もその伝統を受け継ぎ、より良い出版文化の発展を目指していきます。
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