農業従事者の命を守る新たなアプローチ
近年、農業従事者の職務には高い危険度が伴っています。特に心停止を含む急変時の対応には課題が多いことが明らかになりました。新潟医療福祉大学の田中耕一講師を中心とした研究グループは、この深刻な問題に取り組み、持続可能な農業社会の未来を見据えた研究成果を発表しました。
研究の背景と重要性
農業は国民生活に不可欠な産業ですが、同時に高いリスクを伴う職業です。全国的な調査が不十分であったため、農業従事者の健康と命を守るための具体的なデータが必要とされていました。この研究は、農業従事者が直面する危険性を具体的に示し、特に農地での院外心停止(OHCA)症例に焦点を当てています。
田中講師は、「農地での仕事は一般的なオフィス環境よりもはるかに危険です。農業従事者の命を守るためには、早期の発見、通報、応急手当および救命処置がますます重要です」と述べています。
研究の手法と結果
この研究では、2016年から2021年にかけて全国の救急隊が搬送したOHCAデータを用いて分析を行いました。事務所以外の職場で発生した心停止症例を抽出し、13,469件のデータをデータベースにまとめました。
解析の結果、農地で心停止を起こした場合、傷病者が高齢であり、心肺停止の目撃者が少なかったことが分かりました。また、除細動が適用されるケースが減少し、AEDの使用率も低かったことが確認されました。さらに、救急隊が通報を受けてから実際に傷病者に接触するまでの時間が大幅に遅れることが、農地における心停止の生存率を低下させる要因であることが示されました。
結論と呼びかけ
農業従事者の安全を確保するためには、早急に対策を講じる必要があります。今回の研究結果は、今後の農業における安全対策を強化するための重要な一歩となるでしょう。論文は2024年12月30日に、国際的な英文雑誌『Journal of Public Health』で発表される予定です。
この研究は、公益財団法人古泉財団から助成を受けて実施されています。
この研究結果が農業従事者の厚生と安全性の向上に寄与し、持続可能かつ安定した農業社会の実現へと繋がることを期待します。