篠山城下町ホテル NIPPONIA 10周年の歩み
2025年10月3日、兵庫県丹波篠山市にある「篠山城下町ホテル NIPPONIA」が開業10周年を迎える。このホテルは、株式会社NOTEが手がける「NIPPONIA」事業のフラッグシップモデルであり、歴史的な建物を活用したまちづくりの象徴的存在である。
NIPPONIA誕生の背景
「NIPPONIA」という名称はただのホテルブランド名ではなく、地域の持続可能な発展を目指すまちづくり事業の名でもある。その誕生の背景には、当時あまり広く知られていなかった「まちづくり事業」の普及に対する強い思いが横たわっている。事業開始から10年で、全国33地域にわたり約180棟の歴史的建物を宿泊施設や店舗に再生するなど、多大な地域貢献を果たしている。
NIPPONIA事業の進化
NIPPONIA事業のビジョンは「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる」。このビジョンに基づき、丹波篠山の城下町に存在した空き古民家を宿泊施設として再生することからプロジェクトはスタートした。開業時はわずか4棟11室の宿泊施設から、現在では7棟19室に成長した。
しかし、このプロジェクトの進行には多くの課題があった。まず、古民家の担保価値が低いため資金調達が困難であり、融資を受けることができないという悩みを抱えていた際、民間金融機関からのみの資金調達に成功。これにより古民家再生における新たな金融スキームが確立された。
さらに、分散型宿泊施設に関する法律の改正にも寄与した。旅館業法では複数の建物にフロントを設置することが求められたが、「国家戦略特区制度」を利用してフロントを1棟に集約する特例許可を取得。この改正が全国的に分散型ホテルを開設する道を開いた。
これからの地域づくり
NIPPONIA事業10周年の節目を迎え、代表取締役の藤原岳史氏は新たなビジョンを提示している。「観光」から「暮らし」へと視野を広げ、短期滞在ではなく、地域との長期的な関わりを促進する新しいまちづくりへと進化させる計画だ。これを実現するために「NIPPONIA技術研究所」を設立し、地域再生や地域金融の知識を体系化していく。
10年後には、篠山が持つ伝統的な文化や歴史を次世代に継承し、地域の持続可能性をさらに高めるために挑戦を続けることを誓う藤原氏。彼の言葉には、地域と未来に対する強い責任感が感じられる。これからの篠山城下町ホテルは、単なる宿泊施設ではなく、地域の文化を支え、また生き返らせる存在として進化していくに違いない。私たちもその成長を見守り、応援していきたい。